地方を旅する時の楽しみの一つにローカル線にのって車窓を楽しみながら移動するというものがあります。
ローカル線は1両や2両の短い編成の電車が走り、すごく地域密着感があって、乗っている人たちの雰囲気を味わうのも、なかなかに味があります。
今回は、伊万里から西唐津までの移動で利用した筑肥線・唐津線をご紹介します。
目次
朝、6時52分初のJR筑肥線西唐津行きに乗るために6時45分に伊万里駅に着くと、駅には駅員さんがおらず、そのまま改札をスルーして電車へと乗る形でした。
電車は菜の花色の綺麗な黄色に塗られているJR九州キハ125形気動車0番台という車両。
車両のおでこにはY-DC125とあるが、Y-DCとは「YELLOW ONE MAN DIESEL CAR」の略で、無駄にかっこいい。
この車両は最初からローカル線でワンマン運転するための車両として製造されていて、車内には、バスのような整理券発行機や運賃表示機、料金を支払う運賃箱が設置されています。
動力はディーゼルエンジンで、軽油を燃料に走ります。
そのため、電気で走る電車とは異なり、独特なブルルという振動があるのも特徴です。
車内は多くの席が向かい合って座れるクロスシートのスタイルで、なんかこの席を観ると旅行気分が湧いてくるので好きです。
あと、そこそこ長距離を走るので、1両編成なのにちゃんとトイレがありました。
トイレは高齢者や身体的に障害のある人にも対応して、手すりなんかがちゃんとあるタイプでした。
切符は出発前にやってきた運転手さんから直接購入するという方式でした。
伊万里から出ている筑肥線は、唐津市までの山本駅までの区間(25.7km)と、唐津市の唐津駅から福岡県福岡市西区の姪浜駅までの区間(42.6km)からなる路線です。
伊万里~山本間は交通系ICカード(SuicaとかPASMOとかSUGOCAとか)は使えないエリアで、ローカル線感がぐっと増します。
唐津線は佐賀市の久保田駅~唐津市の西唐津駅を結ぶローカル路線です。路線としては東は久保田駅までとなっていますが、運行はその先の佐賀行きとなっています。
伊万里発の西唐津行きの筑肥線は、山本駅まで筑肥線を走り、その後、唐津線の路線を使って西唐津まで行くという形をとっています。
1両編成の時点でローカル感満々ですが、電車が出発するとすぐに森の木々が迫り、遠くには山並みが見え、旅情感を盛り上げてくれます。
ていうか、線路の草もけっこうぼうぼうです、その中を2本の鉄路がしっかりと目的地へ向けて伸びている様子は、自分の使命をしっかり守る生真面目な人に見えてとても好感がもてます。
電車は畑のそばだったり、森の縁を通ったり、時々集落のそばを走ったりと、田舎の風情をこれでもかと見せつけてきます。
駅の側にも家はまばらで、乗ってくる人も少なく、車内にはガタンゴトンと走る電車の音だけが響きます。あと、夢中で写真を撮るシャッター音だけが自分に聞こえてきます。
ちなみに、伊万里駅からは自分のほかには誰も乗車するお客さんはなく、しばらく一人だけの車内を楽しみました。
途中駅でも多くの駅で0人~1人という乗降客でした。
動画:金石原から桃川へと向かう車内と車窓
電車は少ない乗客をのせながら一路唐津へと走ります。
伊万里駅から5駅目の大川野あたりに来ると、山間を走るような感じになり、しかも辺りに朝霧が立ち込めてかなりムードがでてきました。大川野駅入線すると正面には標高288mの日ノ高地山(ひのこうちやま)が見えます。
ていうかこれまでの沿線もずっと山間の鞍部のような場所を走ってきているんですよね、ちょうど大川野は山を避けるために左カーブする場所にある駅なので、駅と山という素晴らしい構図になっているのです。
あと大川野駅は伊万里~山本間で唯一列車交換(電車同士のすれ違い)ができる駅になっています。
唐津方面からやってきた電車との列車交換の際には、こちらの運転手さんがすれ違う電車の運転手さんの所に行ってなにか話していました。
動画:大川野駅での列車交換
途中の駅でみかけた、少し気だるげに電車へとやってくる学生さんもかなり雰囲気出ています。
そうこうしていると、肥前久保駅を過ぎたあたりで東からやってくる唐津線と平行して走るようになり、単線が2本一緒に走って複線見たく見えるような状態になります。
そして本牟田部駅(唐津線のみホームがあり筑肥線には駅施設がない)では完全に合流して並走し、そしてその次の山本駅では乗り換えができます。
乗り換えと言っても、佐賀からやってきた唐津線も目的地は筑肥線と同じ西唐津なのですが、先に筑肥線が山本駅に到着し、後から来た唐津線へ乗り換えて少しだけ早く終点の西唐津に着けるというものです。
この場合、唐津線に乗り換えると7時58分着、筑肥線に乗ったままだと8時3分西唐津着です。
私は乗り換えのことをすっかり忘れて、一度降りて山本駅の様子を撮影して満足して筑肥線に戻ってしまったのですが、西唐津までの切符を買ったことを憶えていてくれた運転手さんが、「唐津線に乗り換えたほうが早いよ」と教えてくれました、ありがたい。
実際、西唐津では呼子へ行くための昭和バスとの接続があったので、時間がギリギリにならないためにもここでは乗り換えがベストでした。
いままで乗ってきた電車の2倍です、やばい。お客さんは3割~4割ぐらいな乗車率でしょうか、学生服だったり、部活の格好をした学生さんが多いです。
電車は唐津の町中に入ると高架線になります。
さっきまで、山の中を走り、線路に生えるぼうぼうの草をかき分けて走ってきたのは何だったのかと少し裏切られた気分です。勝手に盛り上がって、勝手に怒るという、なんだか筑肥線にストーカーじみた片思いをしてしまったのかも、そんなポエミーな恥ずかしい思考が生まれてしまうのも仕方ないほどの筑肥線の魅力ということです。
やがて電車は地域では随一の都会である唐津駅でほとんどの乗客を吐き出し、終点の西唐津へとわずかな乗客を乗せて進みます。
ちなみに唐津線の車両はキハ47形という気動車でした
車窓から眺める自然の雄大さ、乗ってくる乗客の生活感、唐津線になってからの意外性、どれをとってもこのローカル線の旅の魅力です。
乗る人によってはほかの楽しみを見つけることもできるでしょう。
途中下車して駅の周辺をハイキングして、だいたい1時間後にやってくる次の電車に乗ってもよいかもしれません。
ほんと楽しみ方に幅があり、最高に楽しい筑肥線・唐津線の旅でした。