「活イカ踊り丼」
イギリスのウナギのゼリー寄せとか、イヌイットやエスキモーのキビヤック(アザラシのお腹の中に鳥を詰め込んで長期発酵させるもの)とか、スウェーデンの超くさい塩漬けニシンのシュールストレミングとか、フィリピンの孵化直前の卵料理バロットとか、世界には他の地域からしたら信じられないような料理がたくさんあります。
日本は、ただでさえ海鮮の踊り食いなど、生食で驚かれているのに、北海道・函館の函館朝市の中には、「活イカ踊り丼」というSNS映えの凄いメニューを出す「一花亭たびじ」(いっかてい たびじ)というお店があります。
「一花亭たびじ」は、海産物を扱う「海産物専門店 すがわら本店」や蟹や海産物を味わえる「かに専門店 北遊」などを手がけるすがわらグループの飲食店です。
海産物に精通していて、新鮮な食材を扱えるから「活イカ踊り丼」という料理が誕生したのだと思います。そのビジュアルは、まずは動画を御覧ください。
海外でも紹介されています。踊りイカって英語だと「Dancing squid」になるんですね。
動画どうでした? イカ、ほんとに踊ってますね! 活イカ踊り丼では店内の生け簀に泳ぐ、函館近海で獲れたイカを使います。丼には、胴体と耳が取り除かれたイカの頭と足の部分だけがのっかっています。そしてそこに、醤油をたらすと…… 丼の中でイカが足をパタパタさせてまるで逃げ出すかのように蠢(うごめ)くのです。
これは正直ちょっとグロいですね。グロさ:残酷さ:面白さ=10:10:1って感じです。これを面白がって動画にあげるのはちょっと引きます。
ただし、事実を知るとグロさ:残酷さ:興味深さ=5:5:5ぐらいになります。
なぜなら、丼の上にのせられたイカは、脳みそとか心臓とか生きるためのパーツを全部とっぱらわれた状態で、お亡くなりになっているからです。踊るのは醤油が染みて痛い痛いってなっているわけではなく、醤油の中の塩分(高濃度ナトリウムイオン)がイカの細胞内で電位差を生み、経細胞膜で信号が一時的に活性化されることで足がパタパタと動いているのです。
中学校の実験で、解剖したカエルの足に電気刺激を与えて動かすのと同様の感覚でしょうか。
事実を知ると、ただ「キモい残酷」と突き放すのではなく、理科的、生物学的な見地から見ることで非常に興味深い丼に見えてきました。
踊りを終えたイカはそのままかぶりついても良いし、食べやすいように切ってもらうこともできます。
そのほか、丼には胴体が美しいイカそうめんとして切りそろえられ、濃厚なイカの肝、イクラものっています。
“踊り”というパフォーマンスを見れて、新鮮な美味しいイカが食べられてそれでお値段は1890円。いくらイカが死んでいても「残酷」「いや面白い」「この値段なら納得」などなど、感想は人それぞれだと思います。興味のある方はぜひ。
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