唐津でレンタカーを借りて玄海原発見たり棚田を巡ったり(佐賀旅行五日目)

今日(2017年5月28日日曜)は、原発や棚田を見に行く。公共交通機関は観光客にとってほとんどないに等しいので、レンタカーを借りてまわる。レンタカー会社は以前に利用したニコニコレンタカーが安いので、借りようと思ったが、お店の営業時間が19時までで、それだと目的の一つである棚田で夕日を見てからだと間に合わない。仕方ないので、ニコニコよりは高いが、トヨタレンタカーや日産レンタカーのようなチェーンよりは安いバジェット(Budget)レンタカーを利用することにする。今回の旅で一回きりのレンタカーの旅が始まる。

目次

朝は唐津湾を望む満島山に建つ唐津城(舞鶴城)へ

前日は早かったが、今日は7時頃に起床して出発の準備。レンタカー屋に行く前に唐津城を観光することにする。「城内ホテル」というだけあり、宿からはお城まで徒歩で10分ちょっと、途中には早稲田佐賀中学校・高校があった。早稲田が佐賀に系列校を持っているなんて知らなかったな。あとで調べたら早稲田の創設者・大隈重信の出身地・佐賀県だから、OBとかが計画して2010年に開校したものだった。わりと新しいんだな。ちなみに偏差値は67とけっこう高い。

唐津城がある一帯は舞鶴公園となっていて、大通りから行けば、普通に正面の登城口に着く。お城の下の小さな広場では、なにやらジョガーのグループが集まっていた、ジョギング人気だなー。

城を中心に、鶴が翼を広げた姿のようなので舞鶴城とも

看板には石垣修復工事のために登城路が一部閉鎖とある、なぬ知らなかった。あと、天守閣も展示改修工事のために平成29年夏まで休館中だ。基本、天守閣とかあまり興味が無いので、そこは特に問題なし、朝だし通常営業の時でもまだ開館していない時間だし。さて、天守閣は宿から見られたから普通に見れるんだろうけど、工事とはどうなっているのだろうか。まあ何かしらは見られるだろうと、多宝塔の横から天守閣を目指して登っていく。

途中、石垣の上に覆いかぶさるような藤棚があった、藤の季節にはさぞ綺麗だろうとその美しさを想像しため息をつく。あと「ユーリ」という腐女子向けのアニメのコラボレーションを告知するのぼりが立っていた、けっこう地方ってアニメとコラボして町おこししたりするよね。

藤棚

藤棚をすぎて中段広場に出ると、天守閣の真下の石垣が工事中だった。普段は正面の櫓門から入れるのに、工事のために迂回して、西門から入るらしい。石垣は経年劣化などによるはらみ、ゆるみが生じての工事とのこと。いっぺん建物の下にアンカーを入れて支えてから、意石を全部とっぱらって、再度同じ組み合わせで修正するという作業。こーゆー工事技術を残しておかないと、熊本地震の時みたいな時に、ちゃんとした補修工事ができなくなるのだろう、大事な工事だ。

裏口の西門から本丸にイン

西門の方も小規模な工事をしていたが、脇を通り、小さな西門をくぐって本丸内へ。天守閣に登らないでも、高台からの眺めは格別だ。西を見ると砂浜が弧を描き、その先に大きな日本の炉だか塔みたいなものが立っている。地図で見てみると、多分九州電力の唐津発電所だな。

そして東を見ると綺麗な台形をしている「高島」がすぐ目の前に。ここは宝くじファンにとっては大事な「宝当神社」があって、小さな島に年間10万人以上が訪れるという。伊万里にも合ったな、宝くじファンが集まるお茶屋さん、このあたりの人は宝くじ好きなのだろうか。

「高島」の右手を見ると、漁港の先にながーい砂浜が見える。そこは「虹の松原」と呼ばれていて、日本三大松原のひとつ。ほかはどこだろう、前に行った京都の天橋立とか入ってそうと思ったが、静岡の「三保の松原」と福井の「気比の松原」だった、「三保の松原」は次郎長三国志に出てくるところかな、「気比の松原」はまったく聞いたことのない名前だ。「虹の松原」で好きな話は、藩主が松原の中で好きな松が7本あると、どれかを特定しないでかたったという逸話。わざと特定しないで、住民にどの松も大事にさせるという高度な心理操作だ、恐ろしい。

虹の松原の絶景

天守閣は工事中ということだが、館内のことなのだろう。外観は白く美しい姿を見せてくれた。快晴の空に白い天守はほんとうに絵になる。そういえば、なぜか唐津城で検索すると「忍者屋敷」と関連が表示されるのだが、それはアニメ『ユーリ』の中で登場人物が、天守閣に忍者屋敷があると説明したからだそう。もしかして、今の工事って、忍者屋敷っぽくしているのだろうか、アニメの力恐るべし。

今のところ外観は忍者屋敷らしさはない

来た道をそのまま引き返して城の下まででて、帰りは海沿いを歩くことにする。「西の浜」「石垣の道」などと呼ばれているらしい。まだ朝の浜は釣り人が二人いるだけで静かな雰囲気。「前田売店」というお店の前には風呂桶を再利用した水槽に亀が三匹いた、なんか可愛そうだなーって思った。

砂浜と高島

その後は、炭鉱主の大金持ち高取伊好の邸宅である「旧高取邸」の前を通り、干上がったお堀を見ながらホテルへと戻る。途中、正面から女子高生が全力で走ってきた、早稲田の子なんだろう、寝坊して部活に遅れているのかな、先輩怖いもんな、「頑張れと」心のなかでエールを送る。

ホテルの前まで戻ると「時の太鼓」という古そうな仕掛け時計?があった。なんでも正時(午前7時~午後7時まで)になると鐘楼に裃人形が現れ、ドンドンと太鼓を叩き、お堀端に時刻を知らせるらしい。8時ぐらいには浜にいたけど、聞こえなかったな。かつて唐津藩にあった時鐘をモチーフにしているとのことだ。

時の太鼓

朝の散策を終えて、レンタカーを借りに行く

ホテルに戻って、一休みして、9時45分ぐらいに宿をチェックアウトする。ニノ門堀を渡り、町田川も渡る。遠くに見える橋は橋の上に櫓が建っていて面白い。

バジェットレンタカーはガソリンスタンドに併設だった。伊豆下田のニコニコレンタカーもそうだったけど、車の整備はできるし、返却時にガソリンを入れてもらえるしで、ガソリンスタンドは新興レンタカーチェーンに加入しやすい環境なんだろうな。手続きはスムーズですぐに車を借りられた。一日ドライブなので軽はしんどいから普通乗用車にしておいた。

車種は忘れた

まずは呼子に行ってイカを食す

最初の目的地は、昨日も行った「呼子朝市」。昨日の夜、そういえば呼子行ったのに名物のイカを食べてないことに気が付き、今日はイカを狙っていく。でもよく観光ガイドなんかで見るイカまるまる一杯で透き通ったお刺身とか高そうだなーとか思いつつ、呼子を目指す。

ルートは昨日のバスと同じ半島の真ん中を行くルートだとつまらないので、今日は海沿いを走る。漁港や浜なんかを見ながらののんびりドライブは気持ちが良い。交通量も少なくて自分のペースで走れるし、今日は幸先が良い。

呼子朝市に着いたのは10時50分ぐらい、駐車場は前日に観光客用の無料駐車場があるのをチェックしておいたので、そこに停める。でも駐車場は満車でラスト1台だった、やはり休日はそこそこ混む。駐車場の台数はたぶん25台ぐらいだったかな。ここが満車だったら、バスターミナルの裏の臨港駐車場か歩いて10分ぐらいの呼子台場の湯の駐車場に停めるしかないかな。

無料なのが嬉しい

呼子朝市のお店のラインナップは昨日と同じ。でも、昨日よりも人出があるかもしれない。その分活気が会って、お店の人の掛け声も多く、賑やかな雰囲気になっている。イカの刺し身はどうすっかーなーと思って朝市の端までくると、「萬坊(まんぼう)」というお店があって、そこでイカ入りの揚げシュウマイ2個300円を売っているので、もうこれでいいやと購入する。ついでに真っ黒なイカスミサイダーも購入。これで呼子でイカを食べた、飲んだと言い張れるだろう。

イカ入り揚げシュウマイ2個300円。イカスミサイダー216円

揚げシュウマイはパリパリの衣の食感とイカの味が美味い。イカスミサイダーはイカスミを感じずふつーの甘いサイダーとして飲める。すんごく頑張って、イカスミの味を探せば、ほんの少しだけコクがあるかなーって感じ。

さらに朝市にもどってイカ入りちぎり天200円も購入。うん、イカに大満足だ。

イカの後は絶景スポットの多い加部島へ

二度目の朝市とイカを堪能したので、ドライブを再開。次の目的地は加部島だ。加部島に行く途中、道端に車の行列を発見、何かと見てみると、海中レストラン「海中魚処 萬坊」の駐車場に入るのを待っている列だ。さっきの萬坊は実は、呼子のいかしゅうまい発祥のお店で、海中レストランも経営するなど手広くやっているようだ。

「海中魚処 萬坊」は日本発の海中レストラン。海中部分にお座敷席・テーブル席がある「壱の海」があって、海の魚や海中生け簀の魚を眺めながら食事ができる。呼子名物のイカの活き造りも動いている状態で食べられるとあり、かなり人気が高いお店となっている。メニューは小鉢/いか活造り/いかしゅうまい/いかの天婦羅/御飯/お吸い物/香の物/フルーツのセットのいかコースが2860円(税込)。ロケーション&イカ尽くしということで、そこまで高くないと感じる値段設定だ。

海の中に浮かんでる「海中魚処 萬坊」

まぁそこまでイカ好きではないし、一人旅で行くような感じではないので、ここはスルーして、ちょうど「海中魚処 萬坊」を見るために車を停めた場所の前に「加藤嘉明陣跡」があるので行ってみることにする。

ここ鎮西町には、朝鮮出兵のために全国から集められた大名などが陣を張った場所が残っている。陣と言っても、野っ原に天幕を張ったような人ではなく、ちゃんと建物を建てて逗留していたようだ。

なぜ「加藤嘉明陣跡」に寄ったかというと、ゲームの『信長の野望』で加藤嘉明という武将の名前に聞き憶えがあったから。確か武力75ぐらいの微妙な武将だったきがする。でも賤ヶ岳の七本槍だし、最後には会津四十万石の大大名になるんだから立派な人物だったのだろう。

「加藤嘉明陣跡」は、細い道を草をかき分けながら進んだ先にある。そこそこの草ぼうぼう感といい、ちょろっとだけ残る石垣と良い、結構な残念スポット。頑張って想像力を働かせても、朝鮮出兵を控えて、武功を誓う武将の姿は見えてこない。

ちょっとした残念スポット

その後は立派な橋を渡って加部島へ。そういえば昨日の「波戸岬新さざえのつぼやき売店」のおばちゃんが、サザエとかはここで採るって言ってたような気がする。

「風が見える丘公園」には11時50分ぐらいに到着。ここには展望施設があり、無料で入館できる。展望台からの眺めは呼子大橋や呼子港が見える絶景。休憩スペースもあって、ドライブの途中の立ち寄りスポットとしては満点の場所だ。また、甘夏ソフトクリームやおみやげなんかを売るローカル色の強い商店も営業している。

右が呼子大橋、左に呼子港

眺めを堪能した後は、島の東部にある「式内名神大社 田島神社」へ。8世紀の創建という古社だ。ここには元寇の時の蒙古軍船の碇石や名護屋城時代に武将が持ち上げた力石があり、石フリークにはたまらないスポットとなっている。

石が見もの

次は島の北端にある「杉の原放牧場」へ。島の端っこの緑豊かな放牧地に牛がのんびりと草をはむ姿はほのぼのとして良い。また、原っぱ、牛、海、青い空というコントラストも美しい。牛と電気柵一本だけを隔てただけの場所もあり、牛の迫力も感じられる。牛はおっかなびっくりだけどこっちを見て、興味津々なのか、餌でもほしいのか、色々と牛さんなりに考えてそうなところが面白い。時々、電気柵にさわっちゃって鼻の上が火傷で禿げてる子なんかもいるし。

鼻の上に火傷のあとが

加部島に別れを告げて、名護屋城の方へ。昨日は回らなかった城南西部にある「茶苑海月」を見てみる。ふつーに見学できる茶室だと思っていたけど、有料の茶室だった。料金は500円で入苑でき、庭園を眺めながら抹茶と和菓子がいただける。まぁまったりお茶という気分でもないし、ここは壁の上からちょろっと中を見ただけで退散する。

原発について学べる「玄海エネルギーパーク」

さて、次は本日のメインの一つ原発見学だ。東日本大震災以来、必要性やその安全性などが疑問視されている原発。ネットでいくらでも情報は手に入るけど、実際の原発を見てみなきゃわからないことも多いだろうと、訪問を決めた。

九州電力・玄海原子力発電所では、直接原発施設を見学することはできないが、原発の仕組みなどを展示している「玄海エネルギーパーク」がある。そこで色々と原発のことをお勉強しようという狙いだ。13時頃に到着。施設には広々とした駐車場があり、なにやらカーブと直線を組み合わせた、アーティスティックな建物がそびえていた。

「玄海エネルギーパーク」外観

館内に入るとすぐにアテンダントのスタッフさんが声をかけてくれて、館内ガイドが必要がどうか訪ねてくれた。無料だと言うので、もちろんお願いする。ガイドは原発の仕組み、非常時に原発を停める制御棒について、再稼働に向けての取り組みなんかを教えてくれた。こちらからの質問には、原発バンザイ!って感じではなく、非常に丁寧に言葉を選びながら解説してくれる感じだった。回ってみての感想は「原発、ほんとのほんとに安全ならあってもいいのかも」というものだった。

高さ13メートルの玄海原発4号機の実物大模型

なお、訪問当時は、2018年1月に3号機、3月に4号機を再稼働させる予定だったが、神戸製鋼所のデータ改ざん問題を受け、調査に時間がかかるためにそれぞれ2ヶ月ずつずらすと発表している。このデータ改ざん事件って、ほんと怖い、データ改ざんやら資格がない人が検査したりとか、不祥事が日産や東レなどからも漏れ出ているし、真面目な国日本というイメージはどんどん崩れていくだろうな。

そんな真面目なことは旅の時は全然考えてないので、原発すごいな~程度のもの。エネルギーパーク見学後には植物園を見学して、子供たちが遊ぶエネルギーパークあすぴあをちょろっと見下ろしてから次の目的地へ。全部で1時間ぐらいの滞在だった。

原発が稼働していなくても大丈夫な温室。ということは、原発の予熱とかではなさそう

次の目的地は浜野浦の棚田と玄海海上温泉パレア

そこから南へと車を走らせると、右手に「浜野浦の棚田」が現れる。ここは、両サイドが山、そして段々と連なる棚田、その先に海という美しい構図を持つ棚田。画像検索すると美しい夕日の写真がいっぱいヒットするが、今回は夕日の時間にここに居ると唐津で車を返せなくなるので、昼間の景色だけで我慢する。

傾斜度が強く、見ごたえのある棚田

次は「玄海海上温泉パレア」。佐賀には嬉野温泉や武雄温泉、古湯温泉などがあるが、今回は温泉は計画に含まれていないので、ドライブルート上にあるここは自分的に非常に良い立地だ。しかも、ここの温泉は露天風呂からの眺めが良いので楽しみ。

温泉は国道から入ってすぐの場所にあるが、少し手前の仮屋漁港から海沿いを走り、10mほどの小さな橋を渡って、三島という小さな島へ渡り、アクセスする。島には温泉と三嶋神社がある。

まずは温泉前に三嶋神社に立ち寄る。海に向かって小さな鳥居があり、参道を登ると三嶋神社の本殿が現れる。ここは大漁や漁の安全を願う神社のようで、漁師が奉納した大漁祈願やイカリのモニュメントが飾られていた。

三嶋神社

ドライブの無事についてお祈りをすませたら、入浴タイムだ。ここは18億円かけて玄海町が整備して、運営は民間に委託している公設民営の温泉。建物は仮屋湾にせり出すように建っていて、温泉棟(プールもあり)とレストラン棟に分かれている。入浴料は大人520円と安いのも素晴らしい。

服を脱ぎ払ったらまずは大浴場で体を温める。お風呂は、寝湯のジェットバスや打たせ湯、薬湯があって、バラエティ豊かだ。体が十分に温まったら露天風呂へ。写真では見ていたが、実際に見てみると実物のほうが景色が良い。海にせり出した露天は海との一体感を感じられて自然の中でお湯に浸かるようなリラックス感が味わえる。三島のぐねぐねとした海岸線のユニークさや目の前にはプカリと浮かぶ小さな藤島などの景色はまさに絶景だ。温まった体に5月の風も心地よく。かなり満足できるお風呂だった。

露天風呂。
出典:佐賀県玄海町観光ガイドブック GENKAIホリディより

食事処からの眺め、露天風呂からの眺めもだいたい一緒

本格的棚田巡りをスタート、まずは「大浦の棚田」へ

さて、お風呂の後は本格的な棚田巡りのスタートだ。今回のドライブの大きな目的地の一つ「大浦の棚田」へと向かって出発する。ここからだと、まずは国道204号の海岸線を走り、それから半島の山の中を走り、肥前町大浦浜、大浦岡、満越の集落へと入る道を下っていくと視界が開けたらそこが大浦の棚田だ。

進行方向左手に広がる棚田は、湾に向かってすり鉢状になっている傾斜地一面に作られたもので、左右に迫る鬱蒼とした森が、かつてこの地を開梱した人々の苦労を偲ばせる。それにしても棚田は良い。段を形成するあぜ道のカーブや段々が織りなすリズム感、傾斜地故にサイズも形もバラバラの棚が順々に並んでいる様は本当に見飽きない光景だ。

大浦の棚田

しかもこの棚田の背景は、かつて弘法大師がこの地を訪れた際に、その美しさを表現するのに筆を投げたという「いろは島」。1096枚の棚田と波穏やかな内海、そして点在する島々という眺めは、ここでしか眺められないのではないだろうか。

棚田や大浦浜の港などを散策してかなり大満足。そういえば大浦浜にははまてんという、エソやトラギスなどの魚に砂糖と塩を加えてすり身にして練り上げた名物があると聞いていた。実際、「はまてん」という看板は見かけたが、工場、小さな作業場と言ったほうが良いかもしれない建物があるだけで、直売所はなかった。どこかの道の駅ででも買えるのだろうか。

はまてんがないのは残念だったが、大浦の棚田は満喫して満足だった。さて時間は16時45分ぐらい、今日の日没の時間は19時20分なので、夕陽を撮るためには2時間ぐらい余裕がある。ただ、太陽を見ていると、大浦の棚田で日が沈むのは山の向こうで、海の向こうに沈む夕陽は撮れそうにない、それならどこか別の海に面した場所で夕陽を見ようという気持ちになった。

事前に調べた限りでは、ここから車で30分ぐらいの長崎県福島にも400枚の土谷の棚田があるようだ。ただ、今回は佐賀の旅、佐賀で良いところはないかとGoogleマップやら検索やらで調べても余り良い情報がのっていない。

急遽予定を変更して、肥前町での棚田&滝巡りを敢行

そういえば、さっき大浦の棚田展望台にあった地図に地域の名所マップが合ったとカメラのフォルダーを見返すと、肥前町エリアに棚田や滝などの見所がいっぱいあるではないか。デジタルのGoogleは便利だけど、こーゆー局所的な情報は、まだまだアナログの方が強い場合があると感じた一瞬でもあった。

さて、日没まで時間がないので急いで出発することにする。まずは古保志気という交差点まで行き、そこを左折して海の方向へ向かって棚田と滝を見に行く。漁港を通り抜け、なんとなくこっちかなーって方に「瓜ケ坂の棚田」はあった。そこは、耕作放棄された棚田や棚田の中を道路が走っていたりして、美景的には大浦に少し劣るが、枚数も多く立派な棚田だった。ただ、後で気がついたが、ここは実は「瓜ケ坂の棚田」の手前の「上ケ倉の棚田」だった。これはさっき見た展望台にあった唐津うわばエリア観光マップが間違っていたから。やっぱアナログ恐るべしと思い知った瞬間である。

後から写真を見ると、道路があるのも生活感が良いと思ったり

そうとは知らない自分は、「上ケ倉の棚田」を探しながらマップにあった「白糸の滝」を目指す。棚田には白糸の滝という看板もあってすぐに見つかると思ったが、ありそうなところにない、迷ったかなーと思っているところに、小さな「櫛田神社」があって寄ってみると、狛犬の連なりが見事で楽しく写真が撮れた。

階段に沿って向かい合って三連狛犬が並ぶ

撮影後、気を取り直して元の道に戻ろうとすると白糸の滝1kmという看板を発見、やはり通り過ぎていたか。今度は通り過ぎないように慎重に車を進め、滝へと入っていく小道を見つけた。道は滝の手前まで続いていて、車でアクセスできるのが嬉しい。駐車場からは歩行者用の舗装路を2~3分歩けば滝に到着。お地蔵様の向こうに、岩をつたう2筋の滝が見えてきて、来るのに苦労した分すこし感動する。あと滝ではよく見られる虹もすこしかかって綺麗だった。

白糸の滝

さて、日が傾いてきたのを実感できるし、あまり長居はできない。滝を後にして次はおなじく肥前三滝の「男滝」「女滝」、そして「駄竹の棚田」を目指す。車は肥前町入野の肥前市役所前の交差点を右折して、GoogleMapを参考にしばらく先を左折して「男滝」へ向かう。滝へと着く前に左手にはいきなり見事は棚田が現れた、ここが「駄竹の棚田」のようだ。

「男滝」はまだ現れない、GoogleMapだと道に囲まれた森の中にあるようだが、実際、車を走らせると、道沿いの橋から滝を見ることができた。ここはGoogleMapが狂っているようだ、佐賀の魔力がそうさせているのか、「男滝」を隠したい謎の力が働いているのか、それは謎だ。

男滝

「男滝」自体は、「白糸の滝」と同じように柱状節理の岩肌を落ちる滝。「白糸の滝」と比べてスケールが小さく、滝のそばのお地蔵さんの数も少なかった。

次は、男滝とは小さい山一つ向こうにある「女滝」。慈恩寺の脇を通り過ぎ、ふた手に別れる道を左手に進むと、道は森に囲まれた暗い細道になる。細道になってすぐに女滝へと下りる分岐が見つかるのだが、これが鋭角過ぎて曲がれない、スルーして少し進んだ先のT字路を右に曲がって、方向転換することにする。しかし、その曲がった先でみた畑が衝撃的で、ネットとロープを張り、ポールの先にはビールなどの空き缶を突き刺した害獣避けを備えたもので、ちょっと怖かった。そこにとどまっているだけで盗人扱いされそうで、あわてて車をバックさせて、方向転換、「女滝」への坂道を下り、少し膨らんだ長方形の駐車スペースに車を停めた。駐車スペースは、コンパクトカーなら余裕で方向転換できるぐらいの大きさはあった。

そこからは滝まで1分ほど。手前にお堂があって、その先が滝だった。「女滝」はほかの三滝と異なり、柱状節理はあまり見られない。高さも幅もスケールが小さいので、その優雅さから女性らしさを感じ取り、昔の人は「女滝」と名付けたのだろう。

女滝

ここにも滝の側にはお地蔵さんが複数あった。「男滝」よりも多い、そのお地蔵さんには、カラフルな花が、一体一体に丁寧に生けられていた。花はちょうど生けられたばかりのように活き活きとその花弁を開いていて、しっかりと地域の人がお世話をしていることがわかった。

この時点で18時半ぐらい。まだ日没まで少しの余裕があるので、観光マップにある「納所の棚田」を探してみることにする。地図的には、ここから5分、10分の場所にあるはずだ。

車を走らせると、大きな風車や沈まんとする太陽、所々に出現する、忘れ去られたような棚田があって、この地域の景観の素晴らしさに改めて感じ入る。

やがて山間から海へと下る傾斜地に開けた棚田が現れ、ここが「納所の棚田」かと興奮するが、私有地なのだろうか、私設のゲートが設置されてあって、中に入れる雰囲気ではなかった。ちょうど、目の前で農作業している方もいたし。残念、もしかしてここは、誰も入れない幻の棚田なのかもしれない。

納所の棚田と思われる棚田

名残惜しいが、その場を後にして、「駄竹の棚田」へと戻る。ちょうど太陽が海へと落ちようとしているところで、地元のアマチュアカメラマンの方も三脚を設置して撮影しようとしているところだった。

夕陽と棚田、漁から帰ってくる漁船というかなり良い構図だったが、少し雲があってクリアな状態じゃなかったのが残念。マチュアカメラマンの方に話を聞くと、晴れている日はもっと美しく夕陽が照らす一筋の明りが太陽から海、そして棚田まで伸び、それはそれは美しいということだった。今日は、その条件が整いつつあったが残念ながら、雲が出てしまったとのこと、おしかったのかー。まぁでも棚田の撮影と言えば、稲を植え付けた直後がベスト。今回のように、水田の水が見えなくなるぐらい稲が育ってしまうと、水の反射がなくて少し、絵的には落ちてしまうので、ベストな天気でもベストな写真にはならなかったはずだと、自分を慰めることにする。

落日の棚田

さて、太陽は予報通り、当たり前に19時20分には水平線の彼方へと消えていった。唐津のレンタカー屋に返却するのは20時までなので、即帰ることにする。帰りは、主に国道204号と県道33号のルート。Googleマップでは所要時間35分だったが、30分かけて19時50分には無事「バジェット・レンタカー 唐津栄町SS店」に着くことができた。ちなみに午前10時~午後8時まで乗用車タイプを借りてお値段はWeb会員価格で4617円だった。

唐津での夕食は醤油が自慢のラーメン屋「きあげ」

今日は、唐津泊まりではなく、佐賀市まで移動しての宿泊。なので、これからJR唐津線の20時46分発、21時52分着の電車に乗ることになる。これが1時間の電車で料金1110円と、関東近郊の電車料金を考えると、異常に高く感じてしまうお値段なのだ。夜だし、車窓も楽しめなさそうだし、つまらないなー。

とりあえず、今日は午前に呼子朝市でイカをちょろっと食べたっきりで、何も食べていないので、食事処を探す。食べログなんかで検索すると、なにやら商店街に美味しいざる豆腐のお店「川島豆腐店」があるようだが、店休日で閉まっていた、残念。

20時台でやっているお店が全然ない

仕方なく、駅にあるラーメン屋「きあげ」が良さげなので行ってみる。きあげとは醤油の製造工程でできる生揚醤油のことで、熱処理していないので、一般流通には乗らず、一般家庭ではあまり味わうことのない醤油のこと。ここでは、その生揚醤油を使った醤油とんこつラーメンがいただける。

とりあえず、今日はドライブでお酒が飲めなかったので、ビールと本日のおつまみをオーダー。おつまみは柿ピーの小さい袋と、肉串一本、煮玉子1個でしょぼかった。ビールはキンキンに冷えたジョッキで美味い。ラーメン550円は特に醤油が香る、とかはなかったけど、普通に美味しい豚骨ラーメンだった。

とんこつラーメンうまい

JR唐津線で佐賀へ帰る

ビールとラーメンに満足して、駅前の変な銅像を撮ってからホームへ。佐賀行きの電車は1番線1両編成だ。駅の案内掲示板を見るとJR筑肥線の筑前前原・博多方面は6両編成だったり3両編成だったりするので、JR唐津線はかなりのローカル線だということがわかる。

キハ125-3

電車は伊万里から西唐津へ行く時に山本駅まで乗ったY-DC125だ、ただよく見てみると、これはキハ125-3、前に乗ったのはキハ125-2なので、1番違いの車両だった。車内はボックスシートで4人がけだが、それぞれのボックスを一人で使う豪華仕様となっていた。道中は全然外見えないので、ぼーっと1時間が過ぎるのを待つという感じだった。

乗客がみんな気だるげだったのが気になった

佐賀に到着して、今夜の宿はカプセルホテルの「サガシティホテル」。向かいのカプセルのおっさんのいびきがすごくてなかなか寝れなかったー。かなりカプセルには空きがあったし、いびきから遠いカプセルに避難すれば良かった…。

カプセルカプセルしたカプセルホテルだった

 

佐賀のドライブは天気にも恵まれ快適なものとなった。朝の唐津城に始まり、呼子朝市でイカ、加部島で絶景めぐり、玄海原発でお勉強、棚田と滝巡りでしめるコース、景色も食べ物も楽しめるので、人にもオススメできるコースだった。

もう一度いく機会があったら、肥前町をもっとよく掘り下げたい。元寇の防塁だったり、鷹島肥前大橋を渡っていく鷹島も見てみたい。休園してしまったけど、モンゴル村ってのがどんなところだったのかも気になる。行ってみて、さらに行ってみたいところが増える観光地ってのは良いところの証明だと思う。

大浦の棚田にあった敢行マップ、かなり役に立った