ラピュタのポムじいさんが出てきそうな昔の坑道・室岩洞(むろいわどう)

伊豆旅行をすることになり、どこか冒険的なスポットはないかと探していたら最初に見つけたのが、南伊豆町の加納にある石切り場をガイドと一緒に見て回る「カノー伝説」というガイドツアー。

この石切り場、巨大な空間に石を切った跡が角々と残り、非常に魅力的なのだが、ツアーということで拘束時間が1時間30分~2時間とけっこう時間をくうのが自分としてはネックだった。

そこで、自由に見て回れる石切り場を探した所、西伊豆の松崎町に室岩洞(むろいわどう)という石切場跡があることがわかり、そこを訪れることにした。

室岩洞は西伊豆の南よりにある松崎町にある

駐車場から急な階段を下ると石工達が鑿や楔で切り開いた入り口がぽっかり

小さな港やなまこ壁の建物が並ぶ松崎町の中心地から、国道136号で南下すると、道路は坂を登っていき、海沿いですが山道のような様相となり、すぐに室岩洞の看板と小さな駐車場が現れます。

乗用車が5台ほど止められる駐車場。脇にはトイレもあります

室岩洞は海から急に切り立った崖の途中に入り口があり、車は道路の脇の駐車場に止め、急な階段を降りていかなければいけません。

入り口は駐車場とは反対側の階段から(海側)

雨が降っていたのでちょっとおっかなびっくりでしたが、階段は2分ほどの距離と短く、階段を降りきって少し平坦な場所を歩くと石切り場が見えてきます。

海岸へと降りていく感じ

巨大な伊豆石の塊である採石場の入り口は縦にスパッと切り取られ、小さな入り口から奥へと続いています。

10メートル近くはある入り口

この中で、石工たちは 鑿(のみ)や楔(くさび)を使って石を切り出していたんですね。

伊豆石とは、海底に積もった火山灰や軽石、溶岩のこと

実は伊豆半島は、2000~200万年前は火山活動が活発な海の底でした。

火山活動の後で、海底が隆起し、本州と繋がったのは60~20万年前のことです。

海底時代に海底火山が噴出させた火山灰や軽石は長い年月をかけて石となり、積もった時の縞模様を残したまま凝灰石へと変化しました。

この石は軟らかくて加工がしやすく、しかも耐火性に優れるという利点をもっていたことから重宝され、昭和の初めまで伊豆の各地で産出され、伊豆石や伊豆御影石、伊豆青石、沢田石などと呼ばれていました。

この軟らかい伊豆石を指して「伊豆軟石」と呼ばれていましたが、もう一つの伊豆石として、溶岩が固まってできた堅牢な安山岩系は「伊豆堅石」と呼ばれていました。

伊豆の海沿いには石切場が点在し、「伊豆軟石」は、松崎町の室岩洞を始め、沼津・淡島、宇久須、田子、石廊崎、下田の周辺で採石されました。

また、「伊豆堅石」は井田・戸田・河津~熱海までの東伊豆というように、石によって採石できる場所には偏りがあり、伊豆全体では100以上の採石場が存在していました。

採石場マップ

私が訪れた室岩洞は江戸時代から稼働しており、切り出した石材は江戸城の石垣として使われたり、地元松崎町の石蔵の石材などを供給し続け、1954年(昭和29年)頃まで採石場として、のみやつちの音が響いていました。

ほかにも、伊豆石の歴史を紐解くと、6世紀(古墳時代後半)の古墳の石棺に使われたり、世界遺産の韮山反射炉の炉体外部などに伊豆石は使われていました。

暗い坑道の中にハッキリと残る石切の掘り跡

中に入ると暗さに目が慣れないうちは相当真っ暗。

まるでラピュタで軍に追われたパズーとシータが逃げ込んだ廃坑のようだと感じました。

ゆっくりと歩を進めているとだんだん暗闇に目が慣れてきて、内部の照明でもいろいろと観察できるようになります。

坑道の中には石工達をかたどった人形が置かれていて、なんとなく当時の雰囲気を感じ取ることができます。

確か3体の石工像があった

また、石の壁をよく見てみると、縦に石材を切り出しながら横方向に掘り進む「垣根掘り」と「垣根掘り」の後に下方向へ掘り下げる「平場掘り」の跡がはっきりと見え、昔の人は石のコンディションなどを見極めながら、掘りの技術を磨いていったんだなと感心しました。

左の壁を見ると「垣根掘り」と「平場掘り」の境目がはっきりと分かる

また、解説板によると、石を割る作業は、石目に沿って線引きをしてのみでU字型に掘り、そこに楔を打ち込んでから水や熱湯を注いで、楔の膨張を利用して割ったとありました。

耳を澄ますと石たちの騒ぎ声ではなく、コウモリの声が聞こえる

ラピュタでポムじいさんは飛行石を持つパズーとシータに対し、「どおりで石が騒ぐわけだ」と発言しますが、室岩洞では石の声の代わりにコウモリの「キィキィ」という声が聞こえます。

場所は、坑道最奥部にある地下水が溜まった石室跡の少し手前。

この石室の左手前からコウモリの声が

マップを見ると坑道は繋がっているようですが、狭いためか、はたまた落盤のおそれでもあるのか、照明が設置されてなく、開放されていないことを示す斜線が引かれていました。

本当に真っ暗な空間の中からコウモリたちの騒ぎ声が聞こえ、「これで上空に巨大な積乱雲があったら面白い」とか思いながら、今は洞窟の主となった者たちの声を聞いていました。

坑道マップ

入り口と反対側にある出口からは石材の積み出し場所に出られる

コウモリたちに別れを告げ、ぐるっと一周すると、身を屈めないと出られない、天井の低い出口が現れます。

中腰で天井に気をつけながら外へ

ここから先は、切り出した石材を船に載せるための積み出し場所(払い場・浜丁場)への道。

この道は石引道や石出し道と呼ばれ、伊豆の石切り場跡には、地名としてその名が残っている場所もあるそうです。

さて、積み出し場所に立ってみると、そこは海面から10mほどありそうな場所。昔はここから、石を滑り下ろして船に積んでいたそうです。

小さな入江で石を積み込んだ

右・松崎漁港、左・安城岬という眺め。天気が良ければ富士山も見える

冒険のドキドキやワクワクを味わいたくて訪れてみた室岩洞

ラピュタを思わせる伝説っぽい神秘さを味わい、石工たちの息遣いが聞こえてきそうな堀跡を見て当時の苦労を感じることもできました。

地球(ジオ)を学び、丸ごと楽しめる公園である伊豆ジオパークのジオサイトに登録されているにもかかわらず、無料で見れるのも魅力です、子どもに戻った気持ちで、いろいろな発見を楽しんでみましょー。

アクセス

室岩洞へのアクセスは車が便利です、レンタカーを借りるのに便利な下田駅からなら約45分、修善寺駅からなら約1時間15分です。

公共交通機関を使うなら、下田もしくは修善寺から路線バスの東海バスを使うことになりますが、下田からは1時間に1本程度、修善寺からだと乗り継いで行くことになり、かなり厳しいルートになります。

室岩洞の営業時間

ライト点灯時間:8時30分~17時

それ以外の時間は閉鎖されるわけではありませんが、坑道内をライト無しで歩くのはほぼ不可能です。