伊万里の街を散歩中に見つけた伊万里焼、色彩豊かで形もユニーク、しかも無料!

伊万里駅を中心とした伊万里の街は、見所の伊萬里神社や伊万里城跡、美味しい伊萬里牛を食べたレストランチムニー、安宿のビジネスホテルみやこなどが、だいたい直径1.5km内にある、見所がコンパクトにまとまった街です。

特に市街を東から西へと流れ、伊万里港・伊万里湾へと注ぐ伊万里川沿いには、いろいろなところで伊万里焼を見ることができ、かつて焼き物の街として栄えた伊万里の様子をしのばせます。

ここでは、まず最初に伊万里焼の歴史や有田焼との違いについて説明してから、街歩きの最中に簡単に無料で見られる、伊万里焼についてご紹介します。

伊万里焼の歴史とは

実は伊万里焼、最初期の江戸時代初期には伊万里の地で焼き物を作っていたわけではありませんでした。最初は日本で最初に磁器製造を始めた「有田」などで焼かれた陶磁器(磁器)を、伊万里の港に集め、そこから船に積み込んで江戸や大阪などへと輸出していたのです。そして、売る人や使う人達は肥前国の伊万里から届けられる陶磁器のことを伊万里焼と呼ぶようになりました。

やがて伊万里の地でも磁器が作られるようになりますが、特に佐賀藩が国策として製造に力をいれるため藩で直営したのが「鍋島焼」です。最初は有田に窯がありましたが、その後有田と伊万里の中間地点ぐらい、伊万里から直線距離で約4kmの大川内山に窯を構えます。

「鍋島焼」は将軍家・諸大名への贈答品として製造され、カラフルな色絵や現代風・斬新を求めたデザイン・模様で知られます。

海外にも輸出されるなど、隆盛を極めた「伊万里焼」(伊万里、有田含む)でしたが、技術が瀬戸に漏洩したことや、大火による人材流出で幕末にはその勢いを失っていきます。

そして、時代は進み、鉄道が輸送手段になると、「有田」は鉄道で焼き物を輸送するようになり、「有田焼」「伊万里焼」というようにはっきりと区別されるようになりました。

なお、江戸時代前半などに有田や波佐見で作られたものは歴史的、骨董的に価値のあるものとして、今では「古伊万里」として区別されています。

伊万里川にかかる「橋」は伊万里焼の宝庫

長生きできる延命橋

伊万里川には、「延命橋(えんめいばし)」「相生橋(あいおいばし)」「幸橋(さいわいばし)」という縁起のよい3つの橋がかかっていますが、それぞれ橋の欄干に伊万里焼が設置され、見ることができます。

延命橋の伊万里色絵瓢箪鯰唐子像

伊万里色絵瓢箪鯰唐子像

↑みなさん「瓢箪で鯰を押さえる」ということわざをご存知ですか?私は知りませんでした。禅問答として作られたもので、意味は「とらえどころのないさま。とらえどころのない人」というものです。これを、焼き物で表現したのが伊万里色絵瓢箪鯰唐子像です。

この「瓢箪で鯰を押さえる」、実は歌舞伎の舞踏に取り入れられたり、大津絵(仏画・教訓画・風刺画などがある民俗絵画、これも知りませんでした、世の中知らないことだらけですね…)の画題になったりして、江戸時代ではわりと常識だったみたいです。

んで、この像は、そのことわざを表現したもので、唐子(童子)は瓢箪がトレードマークの中国の仙人・李鉄拐(りてつかい)の化身とされています。

表情がのほほんというかちょっと微笑んでいるというか、判別がつかない感じがまさに「瓢箪で鯰を押さえる」的ですね。

延命橋の伊万里色絵碁盤乗唐子座像

伊万里色絵碁盤乗唐子座像

「碁盤の上であぐらをかく」。勝負を投げて碁盤の上にのってしまい居座る姿から、「もうどうにでもなれ」という意味のことわざです。

 

うそです、すいません、瓢箪鯰唐子像がことわざを表現していたのでこっちもと思ったのですが、特にことわざモチーフではないようです。

これは、江戸時代に流行った、碁盤の上で小さなあやつり人形を躍らせるお座敷芸「碁盤人形」をモチーフにしたか、もしくは、七五三の「着袴の儀」がモデルではないかとされています。

延命橋には2つ像が会って、片方は明確なモチーフがあって、片方はあいまい、まさに「瓢箪で鯰を押さえる」的です。(今知ったので使いたいだけ)

相生橋の伊万里色絵酒樽乗人物型注器像

伊万里色絵酒樽乗人物型注器像

↑酒樽にまたがったオランダ人が右手に足付きグラスをもち、左手で酒ビンをかかげてのぞきこむという、どんだけ酔っ払ったらそのような状態になるんだという、ツッコミ待ちみたいな像です。

この像は、18世紀中頃に有田で焼かれた伊万里色絵酒樽乗人物型注器像のレプリカです。

本物の頭部は取り外し可能で、酒を入れて栓をして、酒樽の金属の蛇口を捻ってお酒を出すという、実用的な面があったようです。

台座はヨーロッパで流行したバロック様式の装飾。さすが、ヨーロッパまで輸出していた有田焼です。

相生橋の伊万里色絵菊梅文壺(燭台仕立)

伊万里色絵菊梅文壺(燭台仕立)

↑こちらも古伊万里色絵菊梅文壺(燭台仕立)のレプリカ。

焼き物に付随する、黄金の台座やライオンの飾り、ローソクを立てる燭台の部分が目立っています。

それでも伊万里焼が派手さに負けないのは、曲線と渦巻きを多用するロココ様式に、金彩や赤絵を駆使した色絵磁器の絢爛豪華さがよく調和しているから。

実際、ヨーロッパでは、伊万里焼に金工技術を加えて、王侯の宮殿や館の壁面などを飾っていたそうです。

相生橋の異人さん

オランダ人でしょう多分

↑伊万里色絵酒樽乗人物型注器像と伊万里色絵菊梅文壺(燭台仕立)には、伊万里焼の陶器の説明プレートがあるのですが、この橋の欄干にある異人さんモチーフの陶板にはなにもありません。

当時海外への窓口だったオランダ人かなんかでしょうか。

相生橋の伊万里色絵楼閣山水文大壺

伊万里色絵楼閣山水文大壺

↑橋名表示の真上に鎮座するのは、本場中国の磁器の形状「沈香壺」を模したものです。使用方法としては、中に香水を入れておき、来客時はフタを開けて素敵な香りを部屋に漂わせたそうです。まあ王侯貴族だけのお楽しみですね。

幸橋の夫婦鶏像

夫婦鶏像

↑幸せを呼ぶ三つの縁起橋、幸橋は通ったのですが写真を取るの忘れました。なのでGoogleマップさんにお願いします。

これは、向かい合っている仲睦まじい鶏の像です、さすが、3本の橋を順番に通ると結ばれるという縁起橋のトリを務める幸橋、あれ、もしかして最後という意味のトリと鶏がかけられてるかも?です。

伊萬里神社の境内略図

マップまで伊万里焼

↑幸橋からすぐの伊萬里神社には、伊万里焼で焼かれた陶器製の境内略図があります。本殿や楼門などの基本的な建物の配置図にくわえ、境内のどこに住吉大神や弁財天、大黒天がいるのかなどがわかります。

また、中国から不老長寿の妙薬とされる橘を持ち帰り、この地に一株植えたとされる、田道間守の逸話についても解説しています。

佐賀銀行の伊万里からくり時計 万里音

伊万里からくり時計 万里音

↑相生橋のたもとに建つ佐賀銀行の壁面には、古伊万里でかつての蔵の街の様子が描かれ、9~18時の毎時0分に鐘の音を鳴らすからくり時計があります。ストーリーは、輸出するための伊万里焼を船に積み込み、船の帆が上がって出航して、戻るまでの様子です。わりと地味です。

曲目は決められたものや、時期によって異なるものなど様々。赤とんぼやジングルベル、マイウェイなどの定番曲に加え、伊万里温度、伊万里行進曲、伊万里小唄という伊万里モチーフの曲もあります。

駅周辺でも伊万里焼がお出迎え

伊万里駅は、陶器商家の建物の白壁と、やきものを焼く窯の煙突をモチーフにしたデザイン

伊万里駅に降り立ち、駅を出るとあちらこちらで伊万里焼をみかけます。どれもサイズが大きくて立派なものばかりで、「さすが焼き物の街だな」と観光客をうらなせるのに一役買っています。

ローソンの斜め前にある童子像

童子像でも謎の貫禄

↑大きく見えますが、実物はわりとちっちゃいです。縁起橋でも見かけましたが、伊万里焼は童子モチーフ好きです

駅前広場の壺

壺をポンと置かれても、、って場所にあります

↑全面に波が描かれ、中央に描かれている花はなんでしょう、菖蒲(アヤメ)か菖蒲(ショウブ)か燕子花(かきつばた)的にみえますが。お花詳しくないので、ちょっとわかりません。

伊万里駅前交差点の伊万里色絵婦人立像(東側)

↑江戸時代に制作された古伊万里色絵婦人立像のレプリカ。着物には梅とか菊とか様々な花が描かれています。

伊万里駅前交差点の伊万里色絵婦人立像(西側)

↑交差点の反対側にはもう一体。江戸時代の寛文期(17世紀後半)の風俗画である美人画をモチーフにして作られています。片手で着物の褄(つま=端っこのこと)を軽く持ち上げ、足をスッと出して、優雅に歩く様を表現しています。

着物の帯の下に描かれているウサギっぽい謎の生き物、きになります。

また、これのオリジナルが伊万里・鍋島ギャラリー(伊万里駅西ビル2F)にあるのですが、すんごい性格悪そうな顔つきをしていてうけます。

伊万里駅の駅名標

駅名標

↑有田駅にもホームに陶器製の「有田」という表示がありましたが、伊万里には完璧な伊万里焼による駅名標があります。「いまり」という大きなひらがな表記の中には、遠くから見るとなんか病気みたいなオレンジっぽい点々があります、近くによってみると花だとわかります。でも何の花だろう、市の花はつつじなのですが、これは菊っぽいような…

資料館の中で見られる伊万里焼

 

かつては陶器を扱う商家がずらりと並び、白壁の美しい街並みを形成していたのですが、残念ながら残っているのは2軒だけ(1軒は復元されたもの)。昔から残っている建物は「陶器商家資料館」として、復元されたほうは「海のシルクロード館」として無料公開されています。

陶器商家資料館の伊万里焼・鍋島焼

↑かつての豪商・犬塚家の商家に皿や文鉢などが展示されています。ここには、今では最高級品として扱われる古伊万里はなく、それより1つランクが下がる伊万里焼・鍋島焼がみられます。ランクが下と言っても、繊細な模様、深い青の美しさなど、見ごたえあります。

海のシルクロード館の古伊万里

↑こちらには古伊万里も展示。色絵散水草花文皿(写真左)は、赤い花が一面に描かれた美しい配色。ポイントで使われている金彩も目を引きます。

海のシルクロード館の体験

↑体験工房ではろくろ体験や絵付けの体験ができます。そのサンプルが置かれているのですが、これがインパクト大。ジョジョや、ドラえもんとドラゴンボールの混ぜ合わせ、3月のライオンなどが描かれています。

まとめ

以上が、伊万里を街歩きして簡単に無料で見られる伊万里焼の数々です。

お皿や像、からくり時計など、形にバリエーションがあり、色彩も鮮やかで見ていて楽しいものばかりです。伊万里焼といえば、かつて鍋島焼があり、今でも多くの窯元がある大川内山までいかないといけない、というように考えてしまいそうですが、町中でも十分見られます。

 

また、伊万里駅の2階にはステーションミュージアム「伊万里・鍋島ギャラリー」があり、300円で古伊万里と鍋島焼が見られます。こちらは有料だけあってレベルの高い作品ばかりなので、作品をじっくり愛でたいという方は行ってみて下さい。