CGで復元したバーチャル名護屋城を見ながら城巡りができる「名護屋城」

佐賀には吉野ヶ里遺跡という歴史的な遺跡がありますが、もう一つの代表的な歴史遺跡が「名護屋城」です。この名護屋城は、天下統一を果たした豊臣秀吉の次のターゲットである中国の明と高麗を征服するための朝鮮出兵(文禄・慶長の役、朝鮮征伐とも)の際に、前線基地・出兵拠点として作られた平山城です。

今は、廃城となって何も残っていませんが、最新技術で天守閣などが蘇り、当時をリアルに感じながら探索できるので、ご紹介します。

名護屋城・城下町復元模型
名護屋城博物館展示

目次

名護屋城の歴史

名護屋城は、秀吉が中国の明朝を征服するために、まずは李氏朝鮮を滅ぼすために作った前線基地です。

李氏朝鮮から服属を拒否された後、1591年(天正19年)に築城が開始され、わずか5ヶ月の突貫工事で城は建てられました。

設計(縄張り)は姫路城や大坂城などの設計・築城に携わった黒田官兵衛孝高(くろだかんべいよしたか)によるものです。

VRアプリにも黒田官兵衛登場

そして、加藤清正や黒田長政、小西行長など秀吉直属の武将の指図のもと、主に九州の大名たちが分担して石垣を築きました、九州大名にとっては大きな負担だったでしょう。

実際、地元の領主・波多親(はたちかし)は名護屋城築城に反対したとも言われています。

天辺には5重6階の天守閣がそびえ、本丸・二の丸・三の丸・山里曲輪が配された堅牢な城は、当時の日本では大阪城に次ぐ、17万平方メートル(約17ヘクタール)もの巨大な城になりました。

肥前名護屋城図屏風
名護屋城博物館展示

お城の周囲には、全国から集められた諸大名の陣屋が130以上も構築され、当時名護屋城周辺には20万人の人口があったといいます。実際に秀吉も1年ほどこの地に滞在していました。現在は、「名護屋城跡並びに陣跡」として、国の特別史跡に指定されています。

しかし、お城は、秀吉の死による朝鮮出兵の中止後、1598年(慶長3年)以降に廃城となり、建物の部材や瓦などは、唐津城の建材として使われました。また、一揆による立て篭もり防止のために石垣の大部分も破壊・破却されました。

石垣は一部が残るのみ

廃城がバーチャルリアリティで蘇る

今は、史跡として、一部の石垣が残るだけの名護屋城跡ですが、現代の最新技術高精細コンピュータグラフィックス(CG)を駆使し、バーチャルリアリティ(VR)を使ってその姿を蘇らせます。

アプリ「VR名護屋城」を使えば、名護屋城の位置とリンクしていて、スマホやタブレットで現実の名護屋城を映し出すと、当時の建物がアニメーションで表示され、どこにどんな建物があったのか見ながらお城歩きができるのです。

VRアプリトップ

体験するなら画面が大きいタブレットがオススメですが、旅行にタブレットを持って来ている人は多くはないと思います。

タブレットは、名護屋城に隣接する「名護屋城博物館」で無料貸出を行っているので、そこでレンタルしましょう。

ていうか、VRモードを使うためには、博物館に来館してチェックインしなければいけないので、タブレット借りたほうが早いです。

約420年前の壮大なお城探訪は大手口からスタート

「名護屋城博物館」でタブレットを借り、歩いて名護屋城の入り口へ。

史跡は基本入場無料になっていますが、料金所のおばちゃんに呼び止められ半ば強制的に歴史遺産維持協力金100円をむしり取られます。これ、VRレンタルがなければちょっとイラッとするところですが、VRのおかげでかなり楽しめるので100円は正直安いです。

料金所の先は、大手口。お城の正面入口です。大手口と言っても、単に坂の下ってだけで、現代では何もありません、それが、VRではちゃんと門があって、お城への入場気分が味わえるんだから面白い。あと、ここは春に桜が咲き乱れる、花見の名所でもあります。

大手口

VRでの表示イメージ。※場所は大手口ではありません

見学はタブレット持ちながら、色々な方位にぐるぐる周りながら、昔の名護屋城を映し出しながらうろうろします。

はたからみると変な人です、ニヤニヤしているかもしれません、あとタブレット見過ぎで周りの人に気が付かないかもなので、そのへんは気をつけましょう。

アナログな解説パネルも各所に配置され、結構詳細で面白い

さて、お城に入り、登城坂を上り、東方に張り出した長方形の東出丸(侍詰所)に到着です。

登城坂

東出丸

ここからは、玄界灘や加部島、呼子大橋などが見え、早くも眺望抜群です。

玄界灘に浮かぶ加部島

また、扇形の伊万里焼によるパネル「名護屋城跡並びに陣跡」では、徳川家康や本多忠勝、伊達政宗、真田信幸、仙石秀久、前田利家、大谷吉継、石田三成、藤堂高虎、加藤嘉明などの陣跡がどこにあったのかひと目でわかります。

名護屋城の北から東一帯の陣屋の様子

東出丸からは天守台の裏側になる水手口・水手曲輪へ行くルートと三の丸へ行くルートに分かれますが、ここは本丸を目指すために三の丸へと進みます。

三の丸

三の丸から城門や石段、門や櫓があった本丸大手を抜けると本丸に到着です。

VRの建物と石垣の間をすすんでいく

なお、本丸大手門は伊達政宗が仙台・青葉城に移築したという伝承があります。

本丸御殿と天守閣が建っていた眺望抜群の本丸

広々とした本丸には、かつて本丸御殿が建っていました。本丸御殿には300畳の御広間(対面所)や御台所、書院、御座の間(御殿)など、10棟以上の建物が連なって、それが大きな御殿を形成していました。

予想図

そして、天守閣は本丸の真ん中ではなく、北の端っこの天守台に建っていました。高さ25~30メートルの5重6階(5重7階とも)の天守閣には、金箔を貼った軒丸瓦、鯱瓦が使われ、軒先が金箔で飾られた、秀吉らしい派手で豪壮な建物だったと推定されています。

天守閣

天守台からのパノラマ

本丸には東郷平八郎「名護屋城址」碑や青木月斗の句碑もある

本丸の北や西の端からは、一段低い、水手口、水手曲輪、遊撃丸、船手口、二の丸、弾正丸、搦手口、馬場などがあった場所も見下ろせます。

メキシコあたりの古代遺跡っぽくも見える

アプリ「VR名護屋城」の他の機能

アプリ「VR名護屋城」には、VRで往時の名護屋城を映し出す「VRモード」のほかにもユニークな機能が搭載されています。

「ARモード」では、天守閣のバーチャル眺望を見たり、ARで建物や名護屋城図屏風の登場人物と一緒に記念撮影ができます。「おためしVR・AR」ではVR名護屋城の一部機能を楽しむことができます。

バーチャル眺望イメージ

また、バーチャル名護屋城事業の一環で、バーチャルリアリティ映像やARアプリを作成する際に必要となる航空測量データ(1mメッシュデータ)がオープン化されているので、マニアックな人は、1mメッシュデータをダウンロードしたり、3Dで測量の情報を閲覧して楽しんだりも出来ます。

測量の3Dイメージ

陣屋跡めぐりも面白いかも

名護屋城から見渡したように、城の周囲には130もの諸大名の陣屋跡がありました、建物などは復元されてはいませんが、それぞれ自由に見学できるので、名護屋城見物の後には、お気に入りの大名が陣取っていた場所に行ってみるのも面白いと思います。

加藤嘉明陣屋跡

■施設情報

・名称:名護屋城跡

・料金:入場無料(任意の歴史遺産維持協力金100円)

・住所:佐賀県唐津市鎮西町名護屋

・アクセス:JR唐津駅から車で約30分、昭和バス名護屋城博物館入口から徒歩4分

・営業時間・定休日:入場自由

・電話番号:0955-82-4905(名護屋城博物館)

・駐車場:無料63台、ほか多目的広場駐車場もあり