宿を探す場合に使うサイトとして、様々な物件が掲載されている「じゃらん」「楽天トラベル」「るるぶトラベル」「一休」、物件を比較できる「トラベルコ」などを利用する人は多いと思います。
上記のサイトに掲載されている物件は、法律に沿って旅館業登録している旅館やホテルなどですが、民泊を集めた「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、これまで旅館業登録をしていない物件がほとんどでした。
しかし、民泊として貸し出す物件が増えるにつれ、人を泊めるには適していない環境だったり、貸し手が盗撮して捕まったり、特に女性一人で泊まるのが危険などの多くのトラブルが発生。これに対応するため、政府は住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)を2018年6月15日から施行することにしました。
目次
Airbnbとは民泊物件を多数掲載するWebサイト
アメリカの会社が運営するAirbnbは、世界192カ国・33,000都市・80万以上の民泊物件が掲載されている宿泊サイトです。
一般のユーザーが自分の家の一室などを宿泊場所として提供したい場合、Airbnbに登録すれば、世界中の利用者が見てくれるようになります。
民泊と聞くと安いイメージがありますが、宿泊料金はピンキリで安い設定から、普通の宿よりも高くつく設定まで様々。しかもAirbnbに支払う手数料が結構高く、安さだけを求めて利用しようとすると損をした気分になってしまうので要注意です。
Airbnbの違法民泊物件に対する姿勢
「民泊」は住宅の空き部屋を旅行者に有料で貸し出すものですが、それに対するルールを定めたのが住宅宿泊事業法(民泊新法)です。
この住宅宿泊事業法についての政府からの説明会は2017年2月22日にあったのですが、それに対してAirbnbはオランダの事例を上げ、年間の宿泊数を制限することができ、宿泊観光税5%の代理回収もできていると説明。日本でもこのシステムを対応させられるとしていた。
また、違法状態の民泊物件に対しては、「住宅宿泊事業法のルールを民泊物件のホスト(民泊物件のオーナー)に伝え、リスティング(物件リスト)から削除することはない」としていました。
しかし、2018年6月1日、観光庁が民泊仲介業者に対して「違法物件の宿泊予約取り消し」や「適法民泊への予約変更を求める通知」を出すと、一転して翌6月2日に一挙に違法状態(住宅宿泊事業者、住宅宿泊管理業者として届出や手続き、登録が完了していない状態)の民泊物件4万件超を削除したのです。
2018年3月には約6万2000件だった民泊物件が、この措置によって一気に約1万4000件まで減ってしまいました。
同社では、違法状態の民泊物件に対し、届け出・手続きを完了させて「住宅宿泊事業の届出番号」や「旅館業法や特区民泊の許認可番号」をAirbnbのサイトで入力するよう求めています。
さらに宿泊予約を強制キャンセルへ
なお、6月2日の民泊物件削除時点で予約が入っていた物件に関しては、6月15日の法律施行時以降も宿泊ができる状態になっていました。しかし、観光庁による「法に基づく届出を行う予定がない物件に対しては、今後の予約取消を行うことを推奨」という方針を受け、急遽6月15日~19日の宿泊予約に関して強制キャンセル扱いとすることを発表しました。
民泊物件の違法状態に対する姿勢といい、宿泊予約に対する対応といい、Airbnbの見通しの甘さや対応のずさんさが浮き彫りとなっています。一応、同社としては観光庁が「柔軟な代案を検討してくれなかった」と不満を表していますが、観光庁サイドでは「以前からこの内容で進めていた」としています。
迷惑を受けるゲスト(宿泊予約者)に対しては、支払い済みの宿泊費の満額を返金。さらに、予約金相当額のクーポン、体験に利用できる約11,000円分の体験クーポンが配布されました。この補償金額には総額11億円を投入するとしています。
また、予約キャンセルに伴って、別の宿泊施設を探すなどの対応に追われる宿泊客をサポートすることも発表しています。
8割以上減となった日本でのAirbnbの今後は
違法状態だった民泊物件は、リスティングを消されて慌てて届け出を出しているホストも多く、その届け出が受理されて登録されれば約1万4000件まで減った物件も少しは回復してくると見られます。
しかし、東京都港区の例では、届け出40件の内、受理されているのはわずか5件だけ。
慣れない手続きのため、書類が揃わない不備があったり、「近隣住民への周知」「消防設備」が条件を満たさないというケースが多い状態となっています。
元手いらずで気軽に民泊に参入したホストなどにとって「消防設備」を整えるコストは高く、再登録を諦める民泊物件も多くなります。本稿執筆時(2018年7月4日)では、一斉削除時より約6500件が再登録や新規登録して、現在の物件数は約2万500件に留まっています。
私が以前利用した佐賀県の物件を見てみると、やはり物件数が減っているなあという印象です。逆に言えば、ちゃんと法的に登録を済ませ、「近隣住民への周知」「消防設備」が整っている優良物件だけが残ったとも言えるAirbnb。
以前にはなかった安くて良さそうな物件も新たに登場していて、「変な物件が駆逐された分、良い物件が多くなっているのかも」というプラスの面も大きい感じ。
今後、現状の約2万500件から以前の約6万2000件まで増えることは無いとは思いますが、4万件削除の時の「日本でのAirbnbは終わりか?」という感じは薄れました。
今のようにしっかり届け出を済ませた優良物件だらけのサイトになるなら、新法律グッジョブであり、Airbnbにとっても結果的には良かったということで落ち着くと思われます。
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