2012年に中国LCCの大手である春秋航空によって設立された春秋航空日本株式会社。中国から日本への旅行客、そして日本国内での安価なフライトを提供し、大きな期待が寄せられていました。
しかし、6月22日に発表された第6期決算公告(2017年1月1日から12月31日まで)では、売上高91億4100万円、営業損失42億3,900万円であり、42億2900万円もの経常損失となり、2012年の同社設立以来6期連続となる赤字となってしまいました。しかも債務超過状態でもあります。
赤字の航空会社というと、「飛行機の整備は大丈夫か」「欠航が多くなるのでは」「てるみくらぶのように破産して予約がぱぁになるのでは」というような不安がつきまといます。
本稿では、春秋航空日本の安全面についての考察や、これまでの春秋航空日本の決算データや他のLCCの決算などを元に、春秋航空日本の今後について考えてみたいと思います。
目次
売上高は前期比約1.8倍なのに赤字が膨らむ、その解決策は
2017年の売上高91億4100万円という数字は、2016年の51億6,200万円から約1.8倍となる同社最高の売上高であり、運航開始の2014年度の8億3,600万円、2年目の2015年度の25億2,100万円と比べ、右肩上がりとなっています。
一方、売上総利益から販売費と一般管理費を差し引いた後の金額はマイナスである「営業損失」が続き、2014年度48億8,900万円、2015年度48億3,900万円、2016年度38億1,700万円、2017年度42億3,900万円という数字です。
航空会社の運営には大きなコストが伴います、販売費と一般管理費は一定の金額がかかってしまいます。しかも日本は着陸料や人件費など運航コストが高く、黒字にするためには売上高を伸ばすしかありません。
日本のLCCが黒字化するには
実際、他の日本のLCCを見てみても、ピーチ・アビエーションは就航3年目の2014年には売上高305億円(純利益10億4600万円)、ジェットスター・ジャパンは第5期の2016年に売上高522億円(純損益6300万円の黒字)、バニラエアも第5期となる2015年度は売上高217億円(営業利益約15億円)で各社初の黒字化となっています。
つまり過去の例を見れば最低でも売上高217億円が必要となり、春秋航空日本が2017年に記録した売上高91億4100万円では黒字化は到底無理な数字ということになります。
LCCビジネスの基本では「機材稼働率を高める」必要があり、運航本数は命綱となります。その点、春秋航空日本で不安なのは、すでに成田-高松からの撤退、成田-関空線・成田-新千歳の運休、成田-佐賀・成田-広島は1日2往復だったのが1往復に減便されている点です。
売上高を上げるためには、1日2往復の機材稼働はマストに思えますが、佐賀空港などは空港の機能的に2往復が厳しいという状況のようです。(競合のANAと同時刻になると空港施設、対応がパンクする)
今後、売上高を伸ばすために、他の路線を開拓するか、佐賀、広島線での2往復化を目指すか、春秋航空日本の前途は多難です。
赤字航空会社で飛行機の整備は大丈夫か?
「赤字の会社が整備した飛行機に乗る」、文字にすると恐ろしく感じますが、一応安心できる材料があります。
それは、これまで自社で行ってきた整備を、日本航空株式会社(JAL)とJALエンジニアリング(JALEC)に委託しているからです。
2018年6月6日からは、成田など国内空港ではJALECの整備士が整備・点検を行い、中国の空港では、JALECの委託を受け、JALEC基準で整備を行う現地企業Taikoo (Xiamen)Aircraft Engineering Co., Ltd.社(太古飞机工程有限公司)が担当しています。
春秋航空日本ではこれにより、「LCCの中でも高い航空機材品質を持つ会社となることを目指す」としています。
増資と運行本数を増やすことで黒字化を目指すのか、JALに吸収されるのか
春秋航空日本は、2017年12月期通期決算で株主資本が27億円4500万円のマイナスとなり、負債が資産を上回る「債務超過」状態になってしまっています。
債務超過には、倒産の原因、銀行の貸し渋り、信用低下などさまざまなデメリットがあるので、春秋航空日本は今期中に増資を行う可能性が高くなっています。
増資を行い、債務超過を解消し、運行本数を増やして売上高を伸ばし黒字化を目指す。
これが今後の春秋航空日本のスタンダードなプランになります。このプランは恐らく数年かけて実行されるもので、2018年中や2019年中の春秋航空日本の破産・破綻・運行中止はないと思っています。
もしくは、可能性としてJALによる吸収が考えられます。
2018年3月30日には元JALのパイロットでジェイエア(JAR/XM)副社長、ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)訓練審査部長代理、スカイマーク(SKY/BC)教官を歴任した樫原利幸氏が春秋航空日本の社長に就任しました。
ANAがピーチとバニラエアを傘下に持つのに対し(ピーチとバニラは2019年度末をめどに統合)、JALはジェットスタージャパンへの出資だけという状態でした。しかし、2018年5月には、国際線の中長距離LCCを新しく設立すると発表。
機材の稼働率を上げて低運賃を実現するLCCのビジネスモデルから逸脱したJALの構想は厳しいとの見方がありますが、短距離を小型期で運行する春秋航空日本を早めにJAL化しておいて、いずれ吸収することが既定路線だとしたら納得できる発表でもあります。
まとめ
6期連続の赤字となってしまった春秋航空日本。
2017年末には新しい運航スケジュールが発表されず、破産・破綻も危惧されましたが、2018年のゴールデンウィークの搭乗実績では国際線7.5%、国内線19.8%と搭乗率を上げることに成功し(前年比)、明るい材料もあります。
実際に乗ってみると中国企業が母体というイメージとは全く異なる日本的な素晴らしいサービスが受けられます。
オリコンが発表する格安航空券LCC国内線ランキングTOPでも、peach(ピーチ)、バニラエア、ジェットスター・ジャパンを抑え堂々の1位に輝いています。
2018年に入ってからのセールも国内線で片道1737円~、国際線で3999円~のセールを行っている春秋航空日本。セール価格はなかなかに魅力的なので、今後の運航継続、黒字化を願います。
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