佐賀の旅は3日目、やっぱり朝からお経だった…
ただ、不意を突かれるのと覚悟しているのとでは大違いで、そんなに違和感なく起きることができた。人ってのは環境に慣れることのできる生き物だと確信する。
今日は佐賀市を離れて伊万里へと行く。
伊万里、陶器で有名だけど、今回の目的はズバリ、カブトガニだ。
生きた化石に出会えるかと思うと、わくわくする。
目次
お経で目を覚まし仕事を早めに終わらせて出発
お経は7時ちょうどに始まり、徐々に坊さんのテンションもあがるのか、お経の声と木魚のリズムが早くなる気がする。
しかし、お経でパワーをもらえるのか仕事が早く片付いたので、予定よりも早く出発。
10時半ぐらいに宿(寺)を出て、バスで佐賀駅へと向かう。佐賀市内は結構バス網がしっかりしていて、昨日とは違う場所のバス停を使ったが、すんなり佐賀駅に着けた。
伊万里行きの切符を買って駆け足でふくの家でラーメン
駅のみどりの窓口で自由席特急券と伊万里までの乗車券を購入。電車までの時間がなければコンビニでご飯を買おうと思っていたが、時間があるので、ラーメンを食べに行く。これまで佐賀では「ふくの家」「ビッグワン」「ららら らーめん」と3軒食べたが、「ふくの家」が一番美味しかったので、駅から徒歩で往復10分だが、「ふくの家」へと向かう。
途中、西友でパンツを買う。春秋航空日本は荷物の重量に厳しいという情報だったので、着替えを切り詰めたのでパンツの途中購入は必須だったのだ。
しかし、これが誤算、会計の時に前のおばちゃんが長かったので少し時間を食って、ラーメンを食べ終わった時点で電車の発車まで5分という状況に。
わりと駆け足で佐賀の駅前を駆け抜け、なんとか電車に間に合うことができた。
佐賀駅からJR長崎本線・特急みどりにのってまずは有田まで
電車は顔が真緑で車体はアルミのシルバーボディの783系。
電車にぎりぎりで、自由席なのでこれで座れなかったら悲惨だなと思っていたが、自由席の車内は約6割の乗車率で、一つだけ空いていた窓側席を取れた、嬉しい。大きく取られた窓からは佐賀の田園風景と、天山や彦岳などの山並みを望み、奥行きとか高低差を感じさせてくれ、旅情をかきたててくれる。
やがて電車は乗り換え駅である有田駅に滑り込む。山に囲まれた田舎風情の駅だ。
有田からは松浦鉄道・西九州線に乗って伊万里まで移動
有田駅ではJRから私鉄の松浦鉄道・西九州線に乗り換えだ。
有田では約20分の乗り換え時間があったが、松浦鉄道の電車を早く見たかったので駅から出ることはなく、すぐに乗り換えホームへと向かった。
ホームへ行くと、そこには1両編成の電車が停まっていた、1両編成なんていつぶりだろう?
北海道で釧路本線に乗った時だったろうか?それとも千葉の小湊鉄道だったか?どちらも昔過ぎて1両だったかどうかも記憶がおぼつかないが、ローカル感がすごかったのを覚えている。それにしても1両編成はもしかして初めての体験かもしれない。
松浦鉄道の車両はMR-600形気動車で、JRなどからの払い下げではなく、自社で導入したもので、1両1億円の代物だ。
電車旅はわずか24分だったが、ぽつりぽつりと集落がある中をのんびり走る電車は乗っていて愛おしくなり、田舎の風情にどっぷり浸かれる良いものだった。
終点の伊万里に着くと、駅前マンションがあったりして、都会にきてしまった感覚を覚えたほどだ。
伊万里に着いたら早速カブトガニの館へ。その前に駅を散策
伊万里駅到着が12時37分で、バスは13時5分の予定。
少し時間があるので、駅近くを散策することにする。
まずは松浦鉄道の駅舎をうろうろ。1階には伊万里市観光協会が運営する観光案内所があり、バス停の場所と時間を確認した。
2階にあがると「伊万里・鍋島ギャラリー」という焼物・陶器の展示場がある。元々陶器にはあまり興味が湧かないし、どう見てもスペースが小さいのに300円も取るので入るのをやめる。(あとで別の施設の方に聞くと、あそこは高価な器を揃えているので有料なのは仕方ないとおっしゃっていた)
2階には道路を渡る陸橋がついている、これを渡ると反対側はJR筑肥線の駅舎だ。ここは、道路を挟んで両側に松浦鉄道とJR筑肥線の駅が向かい合うという、珍しい形状になっている。
JRの駅舎の2階には、伊万里市観光戦略室という伊万里市観光課による観光PRなどを行う部署が入っていた。オフィスの前にはずらりとパンフレットが並ぶがあまり興味を引くものがなかった。
あと、重厚な扉がぴったり閉ざされていて、中も全然見えないので、全くウェルカムな雰囲気を感じなかった。
そしてJR筑肥線の1階には「インフォメーションセンター」があった。こっちはガラス張りで中が見えやすい仕様。観光アピールするならどう考えても伊万里市観光戦略室を1階にするべき。しかも、道路を挟んで松浦鉄道駅舎1階に観光案内所、JR駅舎2階に伊万里市観光戦略室という分散もよくわからない。
政治的な縄張り争いなのか、横の連携が上手く行っていないのだろうか。
そう言えば、伊万里市観光協会のホームページの観光スポットにはカブトガニの館がなかったし、あまり観光PRが上手く機能していないという印象だった。
バスの故障のトラブルを乗り越えてカブトガニの館へ
駅周辺を見て回りコンビニで軽食を買ってバス停伊万里駅前でバスを待っていると、「観光案内所」の方が出てきて、運行している西肥バスから連絡があり、「バスのエアコンのトラブルでバスの到着が少し遅れる」という連絡があったと教えてくれた。そーゆー連絡がバス会社から観光案内所に来て、それをちゃんと教えてくれるというしっかりとした連絡網はありがたい。
カブトガニの館で生きた化石とご対面
バスは10分ほどの遅れてやってきて、運行自体は順調でカブトガニの館の最寄りのバス停である、木須崎(きすざき)に到着した。
バス停から1分程歩くとカブトガニの館で、そこは平屋で3部屋だけの小さな小さな博物館だった。
中に入るとすぐにスタッフの人が出迎えてくれた。そこからはスタッフさんのカブトガニ講座、
・ある一定の年になるとオスはメスの後ろに回り、ハサミで甲羅を掴んで一生離さなくなる
・ひっくり返したぐらいでは離さない(実演あり)
・昔と比べてカブトガニは激減した、伊万里湾自体の魚も減りすぎ
・カブトガニは何回も脱皮して成長する
などなど、非常に面白かった。
中でも驚いたのは、カブトガニのオスはある時期になるとメスの後ろにひっつき、そのまま一生を終えるということ。
水槽の中には2匹のつがいがいて、モリみたいので裏っ返しにして見せてくれた時にもしっかりと両手でメスをつかみ、離れようとしなかったのが印象的だった。
また、カブトガニの血がガンの早期発見や治療薬、その他研究に役立つので高価で取引されているというネットの情報について効いてみたが、「そうらしいが、日本では天然記念物なのでそんなことはできない」という回答だった。
カブトガニを堪能した後は周辺をうろうろしてからバスで市街地に戻る
カブトガニの館の周辺には、カブトガニが産卵に来る浜がある。浜に降りてみてぶらぶら散策したり、レンタサイクルが借りられる長~い堤防(夢りんりんロード)を眺めてみたり、海の神様を祀る淀姫神社を参拝したりした。
約1時間の滞在を終え、14時34分の本町経由伊万里駅前行きの西肥バスで伊万里の市街地に戻る。
宝くじが当たる「冨田園茶舗」や伊万里城跡や伊萬里神社神社を見て回る
目的地の伊万里城跡に近いバス停本町で降り、お城へと向かう。
途中、店前に2億5000万円、7000万円、1000万円当選!という紙がベタベタ貼られた「冨田園茶舗」という店が目に留まる。
3億円だの1億円だのがばんばん当たる売り場だそうで、さらに伊万里から国道202号線を北上した冨田神社(佐賀県伊万里市南波多町府招3575)にもお参りすると、当選確率がアップするとか。一瞬買おうかと思いましたが、伊万里駅から国道202号で6kmほど行った場所にあり、行っている時間がないので、それならやめておこうと踏みとどまった。
さて、3億円は惜しいが、観光を続けることにして、目的の伊万里城跡を目指す。2016年に熊本城に行って以来、なんだか城に結構興味を持ち始めてしまった。
少しうら寂れた道を登っていくと、伊万里の街が眼下に広がりお殿様気分。
お城は鎌倉・室町・戦国・安土桃山の中世に伊万里を治めた松浦党の伊万里氏の居城だったもの。松浦党知ってる確か海賊として名を馳せた一族だ。だが栄枯盛衰、天正2年(1325年)頃に龍造寺隆信に攻められて落城したとのこと。
龍造寺隆信も知ってる、信長の野望で戦闘力高かった、政治はそんなに高くなかったけど。
城跡には石垣や天守台みたいな遺構は全然残っていなくて城跡っぽくはないけれど、本丸があった場所には多くの地蔵・仏像が並んでいたりして、歴史的な場所であることがわかる。
帰り道、ふと脇道にそれてみると苔むした道にたくさんの地蔵が並ぶ場所を通り、古墳の石棺があったり、お墓があったりの場所に出る。
ここは伊万里城の中腹でありお城の麓にある圓通禪寺の裏手でもある。竹林の小径や谷なんかがあり、非常に風情のある場所だった。
お次は伊萬里神社へ。ここは西暦72年(景行天皇2年)創祀と伝わる歴史ある神社。古代に不老長寿の実とされ、菓子の中でも最上とされた「ときじくのかぐのこのみ」という橘を日本で最初に植えたことがこの場所に鎮座する由来だそう。
特に強烈なインパクトはないけれど、楼門とかむすびの大楠が見どころだった。
幸せを呼ぶ三つの縁起橋を見る
街を東西に流れる伊万里川にかかる橋には「相生橋(あいおいばし)」「延命橋」「幸橋(さいわいばし)」という縁起の良い橋がある。橋には伊万里焼の大きな陶器や像が置かれ、見応えもある。
味のあるガイドが聞ける伊万里市陶器商家資料館
橋の後は伊万里市陶器商家資料館へ。ここは、江戸時代の陶器商犬塚家の商家を使った、伊万里焼や商家の造り・機能がわかる博物館。
駒の字が染め抜かれたのれんをくぐって中に入ると、人の良さそうなボランティアガイドさんが出てきて、説明してくれる。
伊万里焼と鍋島焼の違いや商家に買い付けに来ていた江戸の商人がどう暮らしていたのかなど、非常に面白かった。
伊万里市陶器商家資料館の後は隣りにある海のシルクロード館に立ち寄ってみる。
ここは白壁土蔵造りの建物を復元したもので、伊万里焼の展示販売やろくろ体験などができる。
街歩きしながら本日の宿「ビジネスホテルみやこ」へ
伊万里焼を満喫した後は、街をぶらぶら散策しながら宿へ向かう。小道を歩くが廃屋が目立つ、なかなか地方都市は厳しそうだ。
途中廃業している「ビジネスホテルかねこ」という宿もみかけた、「ビジネスホテルみやこ」と同じシングル2500円~と看板にある、同じ値段でしかも駅より遠いのに「ビジネスホテルみやこ」が生き残っているということは、何かしらの良い点があるからなのだろう。
「ビジネスホテルみやこ」は長期滞在向けな感じ
宿はうすいグリーンに塗られ、朱色のひさしが目立つ外観。楽天の外観写真がひどすぎて、価格も地域最安値だったので、期待はしていなかったが、少し良いかもと希望が湧いてきた。
宿に入ってカウンターでキーを受け取り、部屋へ。各フロアには冷蔵庫と給湯ポットが置いてある。長期滞在の人は冷蔵庫に自分のドリンクを入れておき、熱湯はカップラーメンに使うのだろう。
部屋は普通のビジネスホテルっぽい。無線LANケーブルがあり、小さなテレビもあり、ウユニットバスはリニューアルしたのか、建物や部屋と比べてキレイだった。
しかし、一番驚いたのは、デスクのイスがパイプ椅子だったこと。色々な宿を使ってきたが、パイプ椅子は初めてだ。
宿で一息ついてから名物の伊萬里牛を食べに「レストラン チムニー」へ
宿から25分ほどかけて散歩して、伊万里牛が食べられる「レストラン チムニー」に向かう。お店は昔ながらの洋食屋といった佇まいで、落ち着ける雰囲気。
メニューをじっくり見て、じゃらん九州ご当地グルメ3年連続グランプリ受賞という謳い文句の伊万里牛ハンバーグセット(デミグラスソース)150g1600円をオーダーする。
セットはコース料理のように一品一品運ばれてきて、スープ、サラダ、ライス、ハンバーグが並ぶのだが、ハンバーグは凄く普通のハンバーグだった。
ただ、サラダは美味しかった、お店の人に聞くとネギのドレッシングとのことで、できるならレシピを教えてほしいほど美味しかった。
ハンバーグがイマイチで軽く気落ちしてホテルに帰るが、夕日が落ちる伊万里の街は少し寂しげであり、また美しくもあり、太陽が「明日は呼子の朝イチで美味しいものを食べればいいさ」と励ましてくれているようでもあり、すぐに忘れて眠ることにした。
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