日本全国にはご当地ラーメンが数多くあり、北海道にも札幌・味噌、旭川・醤油がありますが、三大北海道ラーメンの残り一つが函館「塩ラーメン」です。
シンプルで透明なスープは、すっきりと雑味のない味わい。あまりガツンとくるスープではありませんが、それだけにしっかり出汁をとり、自家製の塩ダレと合わせて作らなければならず、ごまかしのきかない手間と技術が必要なラーメンとなっています。
函館には現在、150軒以上のラーメン屋がありますが、塩ラーメンだけを提供する店というのはほとんどありません。どこも、塩、醤油など複数のスープでラーメンを提供していますが、やっぱり他の地域と比べると、塩ラーメンをメニューの軸にしている店が圧倒的に多いです。
私は、函館滞在中の約1週間に5軒の人気店を巡って食べ歩きしてみました。それぞれに特徴があり、どれも美味しかったのでここでご紹介します。
※本稿の値段は2018年4月訪問時のものです。あと税込みと税抜きがごっちゃになってますご容赦下さい。
目次
背脂のパンチ力に塩ラーメンの底力を垣間見る「新函館ラーメン マメさん」
マメさんは函館でも老舗のらーめん店です。元々は、函館の老舗製麺所・岡田製麺の前社長(当時は一社員)が昭和40年代にオープンした「マメさん」(マメさんは岡田さんのニックネーム)が初代で、少なくとも40年以上の歴史を持っています。
現在は最初にオープンした店舗から場所を移し、函館市電沿いの宝来町に店を構えています。
老舗なのに店名に「新函館ラーメン」と名付けているのは、函館ではオーソドックスな昔ながらのシンプルな塩ラーメンではなく、現代風に背脂を浮かべた、挑戦的な塩ラーメンで勝負しているからでしょうか。
現代風と書きましたが、ラーメンの味を今風に変化させた、というわけではありません。創業当時のように、焦がし背脂を浮かべた、懐かしのマメさんラーメンを再現しています。
お店の歴史は、岡田さんが少年時代に屋台「龍鳳」で食べた味を思い出し、その味に恋い焦がれ、ついに店主の佐々木氏から作り方を伝授され、佐々木氏と二人三脚で駅前ビルにお店を出したことがきっかけです。
なお、岡田さんは後継者候補として岡田製麺に戻らなければならず、初代マメさんは一度閉店します。そして、新横浜ラーメン博物館館長の働きかけで「龍鳳」「初代マメさん」から数えて3代目となる「新函館ラーメン」がオープンし、今に続いています。
元祖マメさんラーメン塩味 600円(税込)
麺はコシがあり、ぷりぷりというかクニクニというか、独特の食感。函館では珍しい中太麺は、コクがありがっつり系なスープにピッタリの相性です。
透明なスープに浮かぶ背脂は、シンプルで味わい深いスープにコクとパンチを加える重要な素材です。焦がしとありますが、あまり焦げ感はなく、余計な雑味をプラスすることなく、ガツンとした味わいを演出するのに成功しています。「コク・パンチ力」に優れたラーメンですね。
トッピングにはお麩、ネギ、チャーシュー、メンマです。お麩がレトロ感を演出していい感じ。また、チャーシューは少し味濃いめ、メンマはごま油かなにかで煮ているのでしょうか、適度なオイリー感で美味しいです。
ほかメニュー
塩ラーメンはふのり麺730円、たまご麺730円とプラス130円で麺を変えることができます。特に海藻の風味を味わえるふのり麺が人気です。私は玉子好きだし、函館塩ラーメンでは珍しい縮れ麺のたまご麺がすごく気になります。
ほかのレギュラーメニューは醤油と味噌があります。
また、函館らしいメニューとしては、いかめしが付くセット850円(ラーメンは塩、醤油、味噌から選べる)もあります。
住所:北海道函館市宝来町22−6
アクセス:函館空港から車で20分、函館駅から車で7分/徒歩20分
営業時間:11時~15時、17時~20時
店休日:第2・3水曜・火曜、木曜日
電話:0138-27-8811
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三代続く昔ながらの塩ラーメン「満龍 深掘店」、毎週木曜日には6種類のラーメンが500円に!
かつては五稜郭の近くで営業し、今は湯の川温泉の近くに移転して営業するのが「満龍 深掘店」です。
現在は三代目が切り盛りするお店で早速、塩ラーメンをオーダー。
しおラーメン 680円
ビジュアルは輪切りのネギがパラパラと振りかけられているせいでとっちらかった印象です。
麺をすくうとふわりと湯気が立ちます、表面を薄くラードが覆っているのでスープが熱々なんですね。
あっつくてすするのが大変だからでしょうか、麺の長さがほかのお店よりも短い気がします。
麺は細麺です。スープはシンプルなお味の塩スープ。ちょっと物足りないかなって思うのですが、いつの間にかするすると麺を口に運ぶ手が止まらなくなります。
デフォで入っているもやしのシャキシャキ食感も合います。
「あ、これはあっさりだと思わせて実は美味しさにハマる味だな…」と気がついた時にはだいたい麺が終わってます。実は夢中で食べちゃう味ですね。
チャーシューはあっさり味のスープと対比を出すためでしょうか、しっかりと醤油に漬け込んだお味、肉を少しずつ食べて麺とスープと一緒に食べるとなお良しです。
メンマは昔ながらのラーメンのトッピングという感じで、特に印象に残らずでした。
特徴を言うなら「シンプル・あっさり」です。
みそカレー 700円
このお店は元祖みそカレーラーメンを標榜するお店です。なので、おすすめのみそカレーラーメンも食べてみました。
味噌スープをベースにカレーを入れたラーメンは、満龍の一番人気ラーメンです。
味噌+カレーってどんな味か、恐る恐る飲んでみると、味噌ラーメンにカレーというより、薄めのスープカレーに味噌の風味が加わった感じで、どちらも主張が強すぎず、お互いを引き立てあっている感じで美味しいです。
塩ラーメンもそうでしたが、このお店、スープがあっさりシンプルながら味わい深いという感じです。
それだけに、ちょっと物足りなさを感じるのですが、卓上のおろしにんにくを入れたら味、激変!でした。
にんにくが味噌とカレーの風味を際立たせて、むちゃくちゃ美味しくなります。塩ラーメンにもにんにく豆乳してみましたが、これほどの味変感はありませんでした、みそカレーラーメンにはにんにく絶対入れてみて下さい。
ちなみに、スープに濃厚さを出すために豆乳を入れたヘルシー豆乳みそカレーラーメン800円もあります。
木曜日の「サービスデー」、みそ・しお・醤油・みそカレー・しおカレー・醤油カレーの6種類が500円に(税込みで540円)
なんと木曜日は大盤振る舞いの500円デー。みそカレー700円、しおカレー700円、醤油カレー700円のカレーシリーズ、みそ680円、しお680円、醤油680円の定番シリーズが全品500円になります。
通常料金はカレーシリーズのほうが高いので、木曜日に頼むならみそカレーがおすすめになりますね。
住所:北海道函館市深堀町31−54
アクセス:函館空港から車で10分、函館駅から車で15分
営業時間:11時30分~21時30分
店休日:火曜日
電話:0138-56-8055
自由市場の中にある「麺屋いなせ」の塩ラーメンは具材が多くて嬉しい
函館三大市場の一つ、自由市場の飲食店エリアにあるのが「いなせ」です。麺メニューの幅が広く、いろいろな味が楽しめるラーメン屋さんです。
塩らーめん 670円(税込)
着丼すると、丼の底まで見通せそうなクリアなスープに驚きます。
そして、透明なスープに映える、青菜やネギ、ゆで卵、のり、メンマ、チャーシューといった具材たち。670円という値段でこれだけの「全部のせ」のような豪華な具材がのるのは嬉しいものです。
麺は少し角があるようなパツッとした細麺。キレの良い塩スープをひろって美味しくいただけます。このお店の味を評価するならこの「キレ」ですね。
チャーシューはちょっとだけ味付けが強いように感じました。淡麗なスープだけに、もっと薄味が自分の好みです。
それにしても、麺とスープの合間に、ネギやら青菜やらで口休め、そしてメンマの食感、のりの風味、美味しい玉子(単に自分が超玉子好きなだけですが)と飽きさせません。
そのほかのメニュー
レギュラーは正油らーめん730円、味噌らーめん810円、辛味噌らーめん860円と今紹介した塩らーめんの4種類。塩らーめん以外はあっさり(鶏ガラスープ)とこってり(豚骨)が選べます。
そのほか、海鮮五目らーめん930円や今週の麺(来店時は正油味のあんかけらーめん800円)、海鮮あんかけ焼きそば830円、シーフードチャーハン670円などがあります。
ラーメン専門店と中華料理屋の中間といった感じのメニュー構成です。
住所:北海道函館市新川町1−2
アクセス:函館空港から車で15~20分、函館駅から車で5分/徒歩15分
営業時間:7時~17時(7時30分開店の場合もあり)
店休日:日曜日
電話:0138-23-3677
開店前から行列必至!1杯500円とコスパも抜群な「滋養軒」
今回紹介する中で、函館から最も近くアクセスの良いお店が「滋養軒」です。常時行列必至なのですが、それは500円という安さだけではなく、塩ダレの加減が絶妙で、じわじわと体に染み入るような滋味豊かな塩ラーメンが美味しいからみんな並ぶのです。
私も開店前に並びましたが、事前情報の開店時間よりも早くお店は営業開始しており、ファーストロット逃しました。ちなみに、ご主人と奥様でまわす厨房のファーストロットは6杯ぐらいの模様です。
函館塩ラーメン 500円
ビジュアルは飾り気のない、人によってはそっけないと感じるかもしれない、ネギ、メンマ、チャーシューだけがのったラーメンです。
しかし、麺を食べてみると「うわープリプリ!」と食感で驚き、舌は滋味深い塩スープの味をとらえて驚きます。
見た目がこれだけシンプルで、こんなにもギャップのある味わいはなかなか出会えません。別にパンチがあるわけじゃないんです、じわじわ、じわじわっと舌がその味をとらえ、舌と脳でその美味しさを理解していくにつれ感動がどんどん広がり、ヤミツキになるという、ほんと懐の深いラーメンです。このラーメンは「滋味深し」です。
その他のメニュー
塩ラーメンはそんなに麺の量が多いわけではないので、もう一品頼むとお腹いっぱいになれます。
焼きギョーザ(1皿6個)350円やチャーハン550円、大盛り150円にして塩ラーメンを心ゆくまで楽しむのもありですね。
住所:北海道函館市松風町7−12
アクセス:函館空港から車で20分、函館駅から徒歩7分
営業時間:11時30分~14時。17時~20時
店休日:火曜日・水曜日
電話:0138-22-2433
【閉店】ミシュランガイドにも掲載されたレジェンド的存在の「星龍軒」
「星龍軒」は屋台から始まり、2代目が函館朝市のすぐそばで営業していた人気店です。
ミシュランガイド北海道2017でビブグルマン(良質な料理を手ごろな価格で食べられるお店のこと)の評価を受けたこともある伝説的なお店ですが、残念ながら2018年4月28日に67年の歴史に幕を閉じてしまいました。
そんなレジェンドラーメン店の閉店間際の営業、絶対行列、大混雑するのは間違いないという状況でしたが、ぜひとも食べてみたく、4月25日の開店前に並ぶことにしました。
閉店直前のレポート
店前に到着したのは10時35分。開店時間は11時なので、ちょっとシャッター狙うには遅い時間でしょうか。
やっぱり店頭にはすでに行列が形成されていました。雨の中、傘をさして約20人が並んでいます。
メディアも取材に来ています、どこのクルーでしょうか、函館滞在中に見かけた台湾メディアかもしれませんね。NHKなんかは閉店当日に来ていたそうですし。
オープン時間の11時には自分の後ろにさらに15~20人が並んでいました。なかなかの盛況です。
オープンから待つこと35分、ようやく入店です。35分で20人さばくとはなかなかのスピードぶりです。記憶あやふやなんですが、もしかしたら少しオープン時間よりも早く開店したのかもです。
店内は狭いですが、なんとか取材して撮れ高を得ようと、カメラマンと音声さんが端っこで頑張っています。
そして注文から約10分、ついに伝説のラーメンが着丼するのです。
雲呑麺 680円
オーダーしたのは事前情報で評価の高かった雲呑麺です。このお店はラーメン専門店ではなく、中華料理店なので、料理としてのワンタンに期待したというのもあります。
ラーメンは三つ葉、メンマ、チャーシュー、ワンタン、ネギが麺のうえに覆いかぶさっています。
最初に麺を食べてみます。中細のストレート麺はわりとふつーです。塩スープはシンプルですが、旨味が深い感じですね。
楽しみにしていたワンタンは皮がなめらかでツルっと入ってくる感じ、そして肉餡にはしょうがが効いていて美味しいです。あーこれはみんなが雲呑麺をおすすめするのはわかる!と納得のお味。
チャーシューは分厚く肉感たっぷり。でも味があまり濃くないので美味しくいただけました。
お店を後にして
11時57分、並び始めて実に1時間22分後にお店を後にしました。まだお店の外には行れ列です。オープン前よりかは5~10人ぐらい減ったかもしれませんが、ど平日の水曜のお昼前にはなかなかの行列だと思います。
食べ終えての感想は「さすがレジェンド」。ほかにも五目麺とかタンメン、チャンポン麺など、気になるメニューも多く、もうその味が楽しめないのは非常に残念です。
まとめ
各店の感想をまとめると、満龍が「シンプル・あっさり」、いなせが「キレ」、滋養軒が「滋味深し」、マメさんが「コク・パンチ力」、星龍軒が「レジェンド」です。
個人的な感想では、あっさり塩ラーメンを背脂によってワンランク上に押し上げているマメさんの「元祖マメさんラーメン塩味」が一押しです。
次点は、いなせの塩らーめん、滋養軒の函館塩ラーメンが同率という感じ。そして満龍が続きます。
一応順位はつけましたが、どのお店もこだわりがあり、レベルの高いラーメンを提供していました。人によっては全く逆のランキングになることもあると思います。
ぜひ、ご自身の舌で味わってみて下さい。
記事読んで腹減ったし函館行く前に塩ラーメンを手っ取り早く食べたい!ってなられた方は↓をどうぞ。
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